KKD(勘と経験と度胸)だけで、設計していませんか? 公差設計のメリット、必要な知識を分かりやすくご説明!
- 公差 / 設計とは?
- 設計現場の実態 / 製造現場の変化
- 公差設計のメリット / 計算事例
強い日本のものづくりを支えた公差設計技術、その技術が今再び注目を集めています。
そもそも「公差とは何か」を、その重要性からやさしく解説します。
「公差」とは?
長さ100mmの金属の丸棒を加工すると仮定しましょう。
全部同じように加工したつもりでも、寸法や形状にはバラツキが発生するため、全ての金属棒を100.00mmぴったりに仕上げることはできません。
設計・製造現場では、このようなバラツキを小さくするために取り組んでいますが、それでもバラツキはゼロにはできません。
このような寸法や形状のバラツキは基本的に、目標とする値を中心として上下に発生します。
そこで、この金属棒の使用用途によって、目標寸法に対してばらついても許される上限の許容値と、下限の許容値が決められます。
この両方の値の差(許容範囲)を「公差」といいます。
このように、ものづくりにおいて必須となる「公差」。皆さんは「公差」をどのように設定していますか?
従来の類似部品の図面に設定していた公差をそのまま使っていたり、KKD(勘と経験と度胸)で適当に決めてしまっていたりしないでしょうか。
設定した公差の値は、製品コストや性能・品質に大きく影響します。
そのため、公差をうまくコントロールした設計をすること、そして、公差設計に関する技術力を高めることが、
ひいては製造業の競争力向上に繋がるといっても過言ではありません。
「公差設計」とは?
一般的に「公差」に関する概念は、
「部品個々の寸法には必ずバラツキがあり、最終的に、図面に記されている公差の範囲内で部品を仕上げること」として認識されています。
これは加工側から見た公差の考え方になります。
ものづくりにおいては、このバラツキの許容範囲(=公差)を、製品の仕様や部品のコストなどを総合的に考えて、設計者が決める必要があります。
その設定した公差によって、最終的な製品仕様を満足できるか、また、実際に加工が可能な公差になっているのかを踏まえた、
トータル的視点から判断する必要があります。
実際の設計においては、下図のように、公差が決められます。
公差が決められる流れ
完成品仕様がある範囲に入るためには、それぞれのユニットがある範囲に入ることが要求され、そこから各部品の公差が割り付けられます。
これが、本来の「①設計の流れ」であり、設計者の意図が反映されています。
完成品からは、小型・薄型化などに向けで、できるだけ厳しい公差を要求したい一方、
部品側からは逆に作り易さ(コスト削減)のため、公差をゆるめて欲しいという要望が入ります。これが、「②製造上の要求」です。
当然、部品個々の公差厳しく(小さく)すれば、それだけコストが上がり、
公差をゆるめれば(大きくすれば)完成品の不具合が発生する危険が高まり、場合によっては、トータルコスト増となることも考えられます。
これら「設計者の意図①」と「製造上の要求②」とを、経済性(コスト)という一つの共通の軸に投影してながめ、
そのバランスするところに公差が決められます。
その際に、統計的考察も加えて計算し、公差を設定することを「公差設計」と呼びます。
最近では、製造の海外移転などの様々な要因により、「②製造上の要求」が設計者に伝わりにくくなっていることが多々あるため、 公差設計には、①と②のキャッチボールがスムーズにできるシステムの構築が必須になります。