部品を位置決めするとは、部品にある程度の力を加えて動かないようにすることです。この場合、力の大きさや部品の支え方の適不適により部品が変形を生じる場合があります。ここでは、変形させない位置決め法について解説します。
(1)変形が問題になる作業とは
次のような作業や工程で、位置決めによる変形が問題になります。
- 切削や研削などの機械加工を行うワークを加工治具に固定する場合→加工の精度が出ない
- 自動機で部品を組付ける場合などのワーククランプ時の変形→安定した自動組付けが出来ない
- 形状検査を行う場合の検査治具上での変形→検査の信頼度低下
- その他:熱膨張・収縮などの物理作用による変形・・・<ここでは省略>
(2)なぜ変形が生じるのか
変形を生じる理由は単純です。
固定のための締付力 > ワークを固定する部位の変形強度
しかし機械加工の場合などでは、安全作業のために強い力で被加工材を固定させる必要があるため、部品の変形力よりも強い締結力で固定する必要があります。
(3)変形させない位置決め法
変形させない位置決め法の基本は、次の考えに基づき固定法を考えることです。
a)固定力を与える部分の変形強度を考える。
b)変形を生じる恐れのある箇所の固定には、固定補助部品を支持として固定力を与える(【図1】)。
c)固定力を与えてもほとんど変形を生じない方向を選び締結力を与える(【図2】)。
d)変形を生じない固定部分を選択し位置決め固定を行う。
ここでは変形させない位置決め固定法について解説しました。しかし厳密には【図1】、【図2】の事例で も、金属の弾性変形の許される範囲で変形を伴う固定状態となっています。