陽極酸化処理
- 適用範囲 硬質陽極酸化皮膜 種類 皮膜厚さ 皮膜の硬さ 耐摩耗性 適用範囲 この規格は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の展伸材、鋳造材などの素地に耐摩耗性などの目的で施した主として硬質陽極酸化皮膜の有効面について規定する。
- 陽極酸化皮膜厚さ試験 塗膜の付着性試験 塗膜の耐溶剤性試験 複合耐食性試験 陽極酸化皮膜厚さ試験 陽極酸化皮膜厚さ試験は、次のいずれかによる。なお、渦電流式測定法による陽極酸化皮膜厚さ試験に用いる試験片は、陽極酸化皮膜に損傷を与えない方法で複合皮膜の塗膜を除去してもよい。 a) 顕微鏡断面測定法 JIS H 8680-1による。製品の3ヶ所以上から採取した試験片の陽極酸化皮膜厚さを測定し、その平均値を小数点以下1位に丸めて平均皮膜厚さとする。 〈概要〉皮膜の垂直断面を顕微鏡で観察して、皮膜厚さ(μm)を求める方法である。正確な測定値が得られるので測定値は、他の測定法の補正に使用できる。(JIS H 8680-1(1998)より)
- 適用範囲 陽極酸化塗装複合皮膜 種類 皮膜の性能 適用範囲 この規格は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の展伸材の素地の防食、美観などを目的として施す陽極酸化塗装複合皮膜について規定する。 陽極酸化塗装複合皮膜 アルミニウムおよびアルミニウム合金に平均皮膜厚さ5μm以上の陽極酸化処理を施した後、塗装を施すことによって陽極酸化皮膜の性能に塗膜の性能を付加して、耐食性、耐候性、装飾性などの品質を向上させた皮膜。 注釈
- アルカリ耐食性 キャス耐食性 耐摩耗性 封孔度 皮膜の呼び方 アルカリ耐食性 皮膜の耐食性は、各種の環境に耐える特性で、用途によっては酸性、アルカリ性および塩水雰囲気などの環境に耐える特性が要求される場合があるが、その品質は下表または次のキャス耐食性の表に適合しなければならない。
- 適用範囲 使用環境別試験項目 皮膜厚さの等級 皮膜厚さの等級と主な用途例 適用範囲 この規格は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に関する全般的な規格であり、品質および試験方法を規定する。ただし、この規格は、次のものを除く。 a) バリヤー皮膜、b) 塗装またはめっきの下地皮膜、c) JIS H 8603に規定する硬質陽極酸化皮膜 使用環境別試験項目 皮膜の、適用される製品に必要な特性および品質は、用途を考慮して取り決めるものとするが、一般に広く必要とされる重要な特性と用途を下表に示す。(○印:試験項目)
- 機能性アルマイトは、以上述べたほかに、次のようなものがあります。 (1)熱吸収アルマイト 電気炊飯器の内釜は、内面をフッ素樹脂コーティング、外面をアルマイト処理されていますが、外面を、錫やニッケルの2次電解により黒色化すると、銀白色アルマイトしたものに較べて10%早く加熱され、省電力になるといわれています。 これは、黒色に電解着色した皮膜の熱吸収速度が大きいからでからです。このことは、本体と底板をかしめて組み立てるケトルにも使われています。すなわち底板を黒色電解着色して熱効率を高めているのです。 (2)熱放射アルマイト パワートランジスターなど電子部品の放熱対策にアルミニウム製のヒートシンクが使われています。従来は、アルミニウム形材に硫酸皮膜+黒色染色処理が行なわれていましたが、十分な黒色に染色するためには10μm以上の皮膜厚さが必要です。しかしこのような厚膜にすると放熱特性が悪くなってしまいます。そこで数μmでも黒色化可能な、2次電解による電解着色が採用されています。黒色化のための金属としては、ニッケル、錫などが用いられています。タグ:
- 摺動部などに使われる機械部品には、潤滑油が使われていますが、潤滑油が使用できない環境では、潤滑油に代わる固体潤滑剤が必要になります。 昔から固体潤滑剤として、グラファイトや二硫化モリブデン、ふっ素樹脂などが知られていますが、これらを皮膜の微細孔の中に生成したり、充填しようとするのが潤滑アルマイトです。 (1)錫の2次電解による潤滑性の付与 硫酸浴等でアルマイト皮膜を形成した後、錫浴で2次電解を行なうとその皮膜の摩耗係数は非常に小さくなります。この試験結果を【表1】に示します。表から明らかなように、微細孔中だけ錫が充填された状態では、摩耗回数が増すにつれて、摩耗係数は増大しますが、錫を過剰に析出させたものは摩耗係数は変化しません。 このようにアルミニウムという比較的軟らかい金属の上に、陽極酸化皮膜を形成し、錫やカドミウムなど軟質金属の薄膜を形成すれば、低荷重対応の耐磨耗性を付与することができます。タグ:
- 硬質アルマイトの特徴について述べましょう。 (1)浴温と皮膜の硬さ 各種電解浴の各浴温において得られる皮膜の硬度の一例を【図1】に示します。 図からわかるように、皮膜の硬度は、電解浴の温度と電解浴の種類によって、大幅に異なることが明らかです。この結果、電解浴として工業的には硫酸+有機酸を使用し(混酸法)、0℃近くの低温で電解する方法が主流となっています。 また、陽極酸化皮膜の性質は、素材であるアルミニウム合金の組成や調質、加工履歴等の影響を強く受けます。従って同じ電解液を使って同じ条件で電解しても素材が異なると同じ性質の皮膜を得ることは出来ません。 材質の違いによる皮膜硬度の違いを【図2】に示しました。これは大久保敬吾氏の開発した電流反転法によるものです。
- 機能性アルマイト 陽極酸化皮膜は、アルミニウム製品に装飾性と耐食性と耐磨耗性を付与するために利用されてきましたが、近年、皮膜の微細孔を利用して、耐磨耗性、潤滑性、磁性、導電性など各種の機能を付与することが行なわれ新しい機能材料として脚光を浴びています。 硬質アルマイト アルミニウムやその合金は、軽くて安価であり、加工性もよいことが特徴でありますが、その泣き所は、表面の硬度が低く、キズが付いたり、摩耗することです。軽度の負荷に対しては通常のアルマイト処理でも対応できますが、ハードな負荷に対しては、硬質アルマイトがほどこされています。 硬質アルマイトは、決して特殊な陽極酸化皮膜ではなく、今まで述べてきた陽極酸化皮膜の延長線上にあるもので、皮膜の硬さ(Hv300以上)と厚さ(通常30μm以上)を重視したものです。陽極酸化皮膜全体を硬さで分類すると【表1】のようになるといわれています。タグ:
- 装飾品には広く染色アルマイト製品が使われています。 多彩な色彩をだすために、有機染料が使われています。 通常は、有機染料の水溶液を作製し、その中に未封孔のアルマイト皮膜を浸漬することによって染料が微細孔に侵入し、染色します。 従って、染料濃度は、淡色は低濃度に、濃色は高濃度に調整し、染色時間は、淡色は短時間、濃色は長時間の浸漬が必要です。 染色浴は、作業の進行に伴って染料濃度の低下、電解浴の持込によるpHの低下、水洗水中の塩素やケイ酸塩イオンの持込による染色忌避等が起こります。これらの障害を克服するために濃度調整・pH調整や脱イオン水の使用をしています。 この他、ペースト状の染色インキを用いてスクリーン印刷で多色染色をしたり、これらと水溶性染色浴との併用で多彩な表現が可能です。タグ:
- 陽極酸化皮膜は、アルミニウム合金・電解浴・電源波形等電解条件によって、皮膜そのものが独特の色調に発色します。【表1】【表2】は直流波形による電解発色ですが、これらの色調は皮膜厚さによって、更に変化します。皮膜が厚くなれば通常色は濃くなります。タグ:
- アルマイト皮膜の断面の模式図を【図1】に示します。 (1)バリアー層 電解初期にできる導電性の皮膜で、その上に成長する多孔質皮膜の成長を支えます。すなわち、バリアー層底部のアルミニウムが電解によって溶解し発生した酸素との反応で多孔質皮膜が生成される場所です。多孔質皮膜の成長に伴い、バリアー層の底部は下へ下へと移動しますがバリアー層の厚さは変りません。厚さは大体20nm程度です。 (1)多孔質層 アルマイト皮膜は、この多孔質層(ポーラス層)の集合体です。上部から見ると真中に微細孔(ポアー)を有する六角形の皮膜セルの集まったものです。電解条件によって異なりますが、セルの直径は100〜300nm、微細孔の直径は10〜20nmです。 染色アルマイトは、この微細孔の上部に染料を入れたものであり、電解着色アルマイトは、微細孔の底部に金属や金属の酸化物などをいれて着色したものです。タグ:
- アルミニウム合金を大別すると、板・棒・管・線・形材などの展伸材、砂型・金型などの鋳物材、ダイキャスト材があります。合金の成分比によって、それらの特徴は異なりますので、JISでは4桁の数字でそれを表しています*。合金系を千番台の数字で、それに続く情報を下2桁で表示します。例えば、純度99.7%以上のアルミニウムはA1070、Al-Mg合金はA5052などです。
- アルミニウムやアルミニウム合金に対する陽極酸化皮膜の種類は、非常に多く、その特徴も多岐に亘っています。 皮膜の特性を支配する大きな要因は、素材にあります。それは、皮膜生成の原理が電気めっきと異なり、素材のアルミニウムが電解により溶解して酸化され皮膜が形成されることにあります。それゆえ皮膜が厚くなるほど素材の溶解量は増大するのであります。また合金の組成や組織によって良質の酸化皮膜が容易に形成できるものと、特殊な方法を用いても困難なものがあります。 アルミニウム合金には、強度などその機能を高めるために組成の異なる多くの合金があり、それらは熱処理合金と非熱処理合金に大別できます。加工面から分類すると、板・棒・条などの展伸材、鋳物・ダイキャストなどの鋳物材があります。 これら合金の陽極酸化の難易度には、大きなひらきがあり、困難なものに対して様々な工夫が考案されてきました。一般に行なわれている陽極酸化皮膜の種類を【表1】に示します。タグ: