機能性アルマイトは、以上述べたほかに、次のようなものがあります。
(1)熱吸収アルマイト
電気炊飯器の内釜は、内面をフッ素樹脂コーティング、外面をアルマイト処理されていますが、外面を、錫やニッケルの2次電解により黒色化すると、銀白色アルマイトしたものに較べて10%早く加熱され、省電力になるといわれています。
これは、黒色に電解着色した皮膜の熱吸収速度が大きいからでからです。このことは、本体と底板をかしめて組み立てるケトルにも使われています。すなわち底板を黒色電解着色して熱効率を高めているのです。
(2)熱放射アルマイト
パワートランジスターなど電子部品の放熱対策にアルミニウム製のヒートシンクが使われています。従来は、アルミニウム形材に硫酸皮膜+黒色染色処理が行なわれていましたが、十分な黒色に染色するためには10μm以上の皮膜厚さが必要です。しかしこのような厚膜にすると放熱特性が悪くなってしまいます。そこで数μmでも黒色化可能な、2次電解による電解着色が採用されています。黒色化のための金属としては、ニッケル、錫などが用いられています。
(3)選択熱吸収アルマイト
無限のエネルギー太陽熱を利用する太陽熱温水コレクターは、太陽熱を効率よく吸収すると同時に、暖められた温水からの熱放射をできるだけ少なくする特性が求められます。
このような特性を「選択吸収性能」といいますが、黒色電解着色皮膜は、この要求によく対応できます。すなわち、波長0.2〜1μmの太陽熱はよく吸収し、波長1μm以上の温水の熱放射は少ないのです。
(4)絶縁アルマイト
アルマイト皮膜の比抵抗は1012〜1014Ωであり、良好な電気絶縁体であります。この性質を利用して、多くの電子部品に使われています。しかし、皮膜の電気的性質は、電解浴の種類や電解条件など、皮膜の種類や封孔などの処理条件によって大幅に異なりますので、実施には細心の注意が必要です。
(5)導電性アルマイト
硫酸皮膜の微細孔に、2次電解で銀など導電性の優れた金属を、微細孔の底から皮膜表面まで電解析出させると、皮膜の電気抵抗は著しく減少します。通常の硫酸皮膜の電気抵抗1×108Ωcmに対し、銀析出皮膜は1×103Ωcmに減少します。これは、静電気防止や電磁波シールドに役立ちます。
(6)その他
抗菌アルマイト、消臭アルマイト、アルマイト触媒などがあります。