研削とよく似た加工法に、ホーン仕上げ、または、ホーニングとよばれる加工法があります。この方法は、油砥石をホーン(hone)と呼ばれる保持具に入れ、砥石に一定の圧力を加えながら、加工物との間で回転と往復運動を行わせ、これに多量の灯油や軽油などの加工液を注入して加工する方法であります。研削に比べて、その切削量は小さいのですが、仕上げ面粗さは非常によくなるので、精密な部品の研削後の仕上げに広く用いられています。
このようなホーニングに、電解エッチングを重畳する方法が電解ホーニングです。電解ホーニングの装置は、機械的ホーニングと電解加工を組み合わせたものであり、その構成を【図1】に示しました。
図のように、被加工物を陽極、管状の金属工具(これが機械的ホーニングにおけるホーンに相当し、通常は電解液に対する耐食性からステンレス鋼が用いられます)を陰極として、両者の間隙を0.07~0.12mmに保ちながら、金属工具に回転および往復運動を行わせます。この金属工具には数箇所にスロットがあり、その中に棒状の砥石が保持されています。この砥石は機械的ホーニングの場合と同様に一定の圧力で被加工面に押し付けられるような機構をもっています。
陰極工具は往復ストロークにおいてホーニングすべき面を完全にカバーできるだけの長さにし、側面には図のように多数の小孔があけてあります。
電解液(通常はNaCl水溶液が用いられます)は陰極工具の内部を通して供給され、側面の小孔から間隙に流出させ、直流電圧を加えながらホーンに回転と往復運動を与えると、砥石によって被加工面の微小な凸部が除去されると同時に電解エッチングによって新鮮な金属面が露出され、ホーニングとエッチングの両作用がうまく重畳されます。
従って、電解ホーニングは、機械的なホーニングと比較すると、砥石の磨耗がすくない、ばりの発生がない、仕上げ面には残留応力や熱的損傷がないなどの特徴をもっています。
電解ホーニングにおける電解電流密度は、電解加工や電解研削における値よりはかなり小さく、20~45A/cm2が用いられます。しかし電解液を加工間隙に供給する圧力は10kgf/cm2とかなり高い値が必要です。仕上げ面粗さ及び寸法精度の再現性を高めるためには、電流を切ったあと数秒間、砥石だけでホーニングしたほうがよい場合などもあるようです。