通常のラッピングにおけるラップ液として電解液を用い、電解エッチングを行いながらラッピングを行う方法を電解ラッピングといいます。この方法は、加工物表面にできる皮膜を電解エッチングによって除去してラッピングが進行しますので、電解研削や電解ホーニングにおける固定砥粒のかわりに遊離砥粒を用い、これを電解液の中に混合させた状態で行います。
電解ラッピングは、実施方法によって【図1】に示すような3種類に分けられます。
図(a)の方法では加工物(陽極)とラップ(陰極)が一定の間隔(0.05~0.2mm)に保持され、この間隙を電解液と砥粒の混合液(電解スラリーといわれます)が流れます。スラリーの流れはラップの回転によってつくられ、スラリーの流れによって砥粒は加工物の表面をこすり、電解生成物を除去します。
図(b)の方法では、ラップと加工物が砥粒を介して押し付けられます。このときラップと加工物の短絡を防ぐために押し付け圧力、砥粒径、砥粒混合比を適当に選定し、間隙に砥粒が入りやすいようにスラリーの供給方法とラップの形状を工夫します。
図(c)の方法では絶縁性の物質(例えば硬質ウレタン)をラップとし、陰極面はこのラップ面より少し凹ませます。この場合は砥粒が小さくても、電気的に短絡しないので、2,000~3,000メッシュの微粉を使用して仕上げ面あらさを小さくすることができます。
しかし電極間の間隙は(a)および(b)の金属ラップの場合より大きく、しかも金属部分の面積が小さいので加工速度は小さくなります。このようなラップは「複合ラップ」といわれています。
電解ラッピングは、ラップの形状とその運動方式により種々の加工に応用することができます。また電解ラッピングは、工業的応用の観点から次の2つに分類できます。一つは硬すぎるか、柔らかすぎるか、あるいは脆くて加工しにくい材料を鏡面に仕上げる方法で、「電解鏡面ラッピング」といわれるものであり、もう一つは電解研削と同じ程度の速度で硬い材料を加工する方法で、一般に、「電解ラッピング」と呼ばれている方法です。