一般の鉄鋼材料は機械的な切削加工や研削加工が容易でありますから、電解研削を必要とすることは稀です。しかし研削焼けを起し易い高速度鋼の重研削、曲がり易い薄板やハ二カム構造製品の平面研削、砥石磨耗の大きい高バナジウム高速度鋼の研削などに対しては電解研削は大きな威力を発揮します。また電解研削は、研削によってバリがでない特徴がありますから、皮下注射針【図1】、積層材料などの研削にも有利です。
しかし電解研削の最も大きなしかも簡単な応用は、超硬バイトの研削であります。このような硬度の高い、削りにくい材料に対しては、加工速度は通常の方法より著しく高くすることができます。
【図2】にリーマの電解研削例を示しました。図から理解できますように、リーマの縦溝に挿入された厚さ1.5mm、幅2.1mmの超硬刃と高速度鋼刃は1パスで研削されます。粒度60~80のダイヤモンド砥石とNaNO2の電解液の使用条件と結果を下段の表に示しました。
通常の方法で研削する場合は、1回の加工量が小さいので、全ての刃を研削するには多数回の回転ごとに位置合わせをする必要がありますが、電解研削では、切込みを深くして1回で全加工深さを除去できるので、すべての歯を研削するのに1回のカッターの回転ですみます。また、タイヤモンド砥石の消耗は通常方法の15%くらいですから、砥石の消耗やこれによる修正作業も少なくてすみます。
また電解研削は、研削中の発熱作用が少ないという特徴をもっていることから、通常の方法では加工硬化を起し易い材料、発熱の影響で特性が変化しやすい熱敏感性材料、たとえばジェットエンジンのタービンブレードやバケット材料、原子炉材料、各種の磁性材料などの研削に有利です。