適用範囲
この規格は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の展伸材、鋳造材などの素地に耐摩耗性などの目的で施した主として硬質陽極酸化皮膜の有効面について規定する。
硬質陽極酸化皮膜
低温の電解浴または各種の有機酸を添加した特殊な電解浴を用いて処理されたアルミニウム材の陽極酸化皮膜。通常の方法で処理された皮膜に比べて硬く、かつ、耐摩耗性に優れることを特徴とする。通常、封孔処理は行わない。なお、耐食性が要求される場合、封孔処理を行うが、この場合、耐摩耗性は低下する傾向にある。
種類
皮膜の種類は素地の材質によって下表による。
種類 | 材質 |
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1種 | JIS H 4000、JIS H 4040、JIS H 4080、JIS H 4100およびJIS H 4140に規定する展伸材のうち 2種に属する合金を除く展伸材 |
2種-(a) | 2000系展伸材 |
2種-(b) | 7000系展伸材およびマグネシウムを2%以上含む5000系展伸材 |
3種-(a) | JIS H 5202およびJIS H 5302に規定する鋳造材のうち、銅2%未満または、けい素8%未満の合金 |
3種-(b) | 3種-(a)を除く他の鋳造材 |
皮膜厚さ
皮膜厚さは原則として平均皮膜厚さとする。試験は、顕微鏡断面測定法または渦電流式測定法によって行い、皮膜厚さおよびその均一性の程度は、受渡当事者間の協定による。
皮膜の硬さ
皮膜硬さ試験は、マイクロビッカース試験機を用い、皮膜の断面についてJIS Z 2244(ビッカース硬さ試験)の規定に従って行う。試験荷重は0.490Nとするが、皮膜厚さの薄い場合または比較的軟質の皮膜では、0.245Nとしてもよい。
皮膜硬さは下表に適合しなければならない。
種類 | 微小硬さ(HV0.05) |
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1種 | 400以上 |
2種-(a) | 250以上 |
2種-(b) | 300以上 |
3種-(a) | 250以上 |
3種-(b) | 受渡当事者間の協定による |
耐摩耗性
耐摩耗性は、往復運動平面摩耗試験、噴射摩耗試験または平板回転摩耗試験のいずれかによって試験を行い、それぞれ下表に適合しなければならない。
対摩耗試験 | 往復運動平面摩耗試験 での耐摩耗性 |
噴射摩耗試験 での耐摩耗性 |
平板回転摩耗試験 での耐摩耗性 |
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種類 | 耐摩耗性基準試験片に対する比率(%) | 最大質量減(mg) | |
1種 | 80以上 | 80以上 | 15.0以下 |
2種-(a) | 30以上 | 30以上 | 35.0以下 |
2種-(b) | 55以上 | 55以上 | 25.0以下 |
3種-(a) | 受渡当事者間の 協定による |
受渡当事者間の 協定による |
受渡当事者間の 協定による |
3種-(b) |
〈耐摩耗性基準試験片仕様(硬質皮膜用)〉(JIS H 8603(1999) 付属書1より抜粋)
1. 素地材質:素地材質は、A1050 P-H14またはA1050 P-H24とする。
2. 標準寸法および形状:標準寸法は、100mmx100mm、厚さ2mmとし、形状は平板とする。
3. 前処理:前処理は、通常の脱脂、軽度のアルカリエッチングおよびスマット除去とする。
4. 陽極酸化:陽極酸化は次による。
- a) 浴組成
- 遊離硫酸濃度:180±2g/L、浴存アルミニウム濃度:1~5g/L、溶媒:脱イオン水
- b) 電解条件
- 浴温:0±0.5℃、電流密度:3.5±0.35A/dm2、浴かくはん:圧縮空気および/または液循環、皮膜厚さ:50±5μm
備考
試験片は、浴かくはんの効果があるよう表面が垂直になるようにして陽極酸化する。直流電解時のリップル率は5%以下とする。電解槽中の液量は、試験片1枚当たり最低10L以上必要とし、20枚以上の試験片を同時に電解してはならない。
5. 後処理:後処理は、冷風で強制乾燥(未封孔)とする。