適用範囲
この規格は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の展伸材の素地の防食、美観などを目的として施す陽極酸化塗装複合皮膜について規定する。
陽極酸化塗装複合皮膜
アルミニウムおよびアルミニウム合金に平均皮膜厚さ5μm以上の陽極酸化処理を施した後、塗装を施すことによって陽極酸化皮膜の性能に塗膜の性能を付加して、耐食性、耐候性、装飾性などの品質を向上させた皮膜。
注釈
主として塗膜の付着性を向上させるための下処理として平均皮膜厚さ5μm未満の薄い陽極酸化皮膜を施し、その上に塗装をしたものは、複合皮膜に含まれない。
種類
複合皮膜の種類は、複合耐食性および耐候性によって区分し、下表の4種類とする。
種類 | 複合耐食性 | 耐候性 a) | 参考 | ||
---|---|---|---|---|---|
複合耐食性試験 b) | キセノンランプ式 促進耐候性試験 |
サンシャインカーボン アーク灯式促進 耐候性試験 |
適用環境 | ||
紫外線蛍光ランプ式 促進耐候性試験 |
キャス試験 | ||||
試験時間 (h) | |||||
A1 | 240 | 120 | 4000 | 3000 | 過酷な環境で、かつ紫外線露光量の多い地域の屋外 |
A2 | 240 | 120 | 2000 | 1500 | 過酷な環境の屋外 |
B | 240 | 72 | 1000 | 750 | 一般的な環境の屋外 |
C | - | - | 350 | 250 | 屋内 |
注釈
- ※
- JIS H 8602:1992で規定している種類との比較を下記「種類の対比」(附属書C)に示す。
- ※
- 適用環境において、「過酷な環境」とは、腐食・劣化の激しい地域で海浜および沿岸をいい、「一般的な環境」とは工業地域、都市地域および田園地域をいう。
海浜とは、海岸線から300m以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が最も激しい地域)をいう。
沿岸とは、海岸線から300mを超えて2km以内の地域(飛来する海塩粒子の影響が比較的大きい地域。ただし、南西諸島の島は、海岸線から2kmを越えても、すべてこの区分に入れる。)をいう。
工業地域とは、生産活動に伴って、大気汚染物質 [硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、降下ばいじんなど] を発生する地域をいう。
都市地域とは、商業および生活活動に伴って大気汚染物質を発生する地域をいう。
田園地域とは、大気汚染物質の影響が少ない地域をいう。
紫外線露光量の多い地域とは、亜熱帯海洋性気候に類似した地域をいう。
種類 (JIS H 8602:2010) |
種類 (JIS H 8602:1992) |
---|---|
A1 | - |
A2 | A, B |
B | B, P |
C | C |
皮膜の性能
複合皮膜の性能は試験を行い、下表による。
項目 | 性能 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
A1 | A2 | B | C | ||||
陽極酸化皮膜の厚さ(平均皮膜厚さ)a)(μm) | 5以上、かつ、各測定点皮膜厚さが、すべて平均皮膜厚さの80%以上でなくてはならない。 | ||||||
キャス耐食性 | 試験時間(h) | 120 | 72 | 24 | |||
レイティングナンバ(RN) | 9.5以上 | ||||||
塗膜の付着性 | 碁盤目試験 | 25/25 | |||||
沸騰水碁盤目試験 | 沸騰水試験 | 試験時間(h) | 5 | ||||
外観 | 塗膜にしわ、割れ、ふくれおよび著しい変色が生じてはならない。 | ||||||
沸騰水試験後の碁盤目試験 | 25/25 | ||||||
塗膜の耐溶剤性 | 試験前後の塗膜の鉛筆硬度の低下は、JIS K 5600-5-4の6.2に規定する硬度スケールで1単位以上でなければならない。 | ||||||
耐アルカリ性 | 試験時間(h) | 24 | 8 | ||||
レイティングナンバ(RN) | 9.5以上 | ||||||
複合耐食性 | 紫外線蛍光ランプ式 促進耐候性試験 |
試験時間(h) | 240 | - | |||
キャス試験 | 試験時間(h) | 120 | 72 | - | |||
レイティングナンバ(RN) | 9以上 | - | |||||
促進耐候性 | キセノンランプ式 促進耐候性試験 |
試験時間(h) | 4000 | 2000 | 1000 | 350 | |
外観 | 著しい変退色および著しいチョーキングが生じてはならない。 | ||||||
光沢保持率(%) | 75以上 | ||||||
サンシャインカーボン アーク灯式 促進耐候性試験 |
試験時間(h) | 3000 | 1500 | 750 | 250 | ||
外観 | 著しい変退色および著しいチョーキングが生じてはならない。 | ||||||
光沢保持率(%) | 75以上 |
注釈
- a)
- 陽極酸化皮膜厚さを測定するときに、複合皮膜の厚さも測定しておくとよい。