摺動部などに使われる機械部品には、潤滑油が使われていますが、潤滑油が使用できない環境では、潤滑油に代わる固体潤滑剤が必要になります。
昔から固体潤滑剤として、グラファイトや二硫化モリブデン、ふっ素樹脂などが知られていますが、これらを皮膜の微細孔の中に生成したり、充填しようとするのが潤滑アルマイトです。
(1)錫の2次電解による潤滑性の付与
硫酸浴等でアルマイト皮膜を形成した後、錫浴で2次電解を行なうとその皮膜の摩耗係数は非常に小さくなります。この試験結果を【表1】に示します。表から明らかなように、微細孔中だけ錫が充填された状態では、摩耗回数が増すにつれて、摩耗係数は増大しますが、錫を過剰に析出させたものは摩耗係数は変化しません。
このようにアルミニウムという比較的軟らかい金属の上に、陽極酸化皮膜を形成し、錫やカドミウムなど軟質金属の薄膜を形成すれば、低荷重対応の耐磨耗性を付与することができます。
【表1】錫を析出した皮膜の摩耗係数*
(2)2次電解によるMoS2の析出
陽極酸化処理後、モリブデン酸アンモンなどを主成分とする2次電解浴を用いて電解すると、微細孔の中に2硫化モリブデン(MoS2)の潤滑性に優れた物質が生成されます。
(3)ふっ素樹脂微粒子の電気泳動
潤滑性、非粘着性(付着し難い性質)などに定評のあるふっ素樹脂(テトラフルオロエチレン)の微粒子(0.5〜5μm)を分散した液に、陽極酸化処理の終了した皮膜を浸漬し、ワークを陽極にして電気泳動処理を行なうと、アルマイトの微細孔の中にマイナスに帯電しているふっ素樹脂の微粒子が充填されます。
この方法は、タフラム処理として有名であります。
(4)各種皮膜の摩耗係数
以上のべたことを摩耗係数について纏めると、【図1】のようになります。