硬質アルマイトの特徴について述べましょう。
(1)浴温と皮膜の硬さ
各種電解浴の各浴温において得られる皮膜の硬度の一例を【図1】に示します。
図からわかるように、皮膜の硬度は、電解浴の温度と電解浴の種類によって、大幅に異なることが明らかです。この結果、電解浴として工業的には硫酸+有機酸を使用し(混酸法)、0℃近くの低温で電解する方法が主流となっています。
また、陽極酸化皮膜の性質は、素材であるアルミニウム合金の組成や調質、加工履歴等の影響を強く受けます。従って同じ電解液を使って同じ条件で電解しても素材が異なると同じ性質の皮膜を得ることは出来ません。
材質の違いによる皮膜硬度の違いを【図2】に示しました。これは大久保敬吾氏の開発した電流反転法によるものです。
(2)皮膜断面の硬さ
【図3】に硬質皮膜断面の硬度の分布を示します。皮膜の厚さが増加するにつれて、電解液と接する最初に出来た皮膜表面は電解液に溶解され多孔質になるので、硬度は低下します。
(3)耐磨耗性
硬質アルマイト皮膜は、硬度が高く耐磨耗性が優れているといわれています。【表1】にテーバーアブレーサー摩耗試験機で実験した結果を示します。
硬質アルマイト皮膜は、アルミニウム素材の32倍以上、硬質クロムより優れていることが分かります。
【表1】各種材料の耐摩耗性の比較
(20,000回転の摩耗量、摩耗輪CS-17、荷重1kg)
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