機能性アルマイト
陽極酸化皮膜は、アルミニウム製品に装飾性と耐食性と耐磨耗性を付与するために利用されてきましたが、近年、皮膜の微細孔を利用して、耐磨耗性、潤滑性、磁性、導電性など各種の機能を付与することが行なわれ新しい機能材料として脚光を浴びています。
硬質アルマイト
アルミニウムやその合金は、軽くて安価であり、加工性もよいことが特徴でありますが、その泣き所は、表面の硬度が低く、キズが付いたり、摩耗することです。軽度の負荷に対しては通常のアルマイト処理でも対応できますが、ハードな負荷に対しては、硬質アルマイトがほどこされています。
硬質アルマイトは、決して特殊な陽極酸化皮膜ではなく、今まで述べてきた陽極酸化皮膜の延長線上にあるもので、皮膜の硬さ(Hv300以上)と厚さ(通常30μm以上)を重視したものです。陽極酸化皮膜全体を硬さで分類すると【表1】のようになるといわれています。
【表1】硬さによる陽極酸化皮膜の分類
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硬質アルマイト処理条件の一例を【表2】に示します。
【表2】硬質アルマイトの電解条件
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これらの特徴を挙げると次の通りです。
(1)電解浴
工業的には電解浴として、硫酸浴、硫酸+しゅう浴(混酸浴)、しゅう酸浴があげられますが、この他各種の無機酸・有機酸、芳香族スルフォン酸なども使われます。
(2)浴温
普通アルマイト処理が20℃近辺で行なわれるのに対して、硬質アルマイトは0℃付近の低温で行なわれるのが一般的です。その理由は、低温のほうが皮膜の硬度が高いからです。
(3)電流密度
電解時に流す電流の強さは、普通、電流密度で表されます。単位面積あたりの電流をA/dm2で表したものです。硬質アルマイト処理は、普通アルマイトの2〜5倍の電流密度で電解します。これはできるだけ短時間に皮膜を生成させ、生成した皮膜が電解液に溶解するのを防ぐためです。
(4)攪拌・冷却
電解電流密度を高めると、電解電圧も上昇します。低温であることも電解電圧を上昇させます。それゆえ電解浴に投入される電力も大きくなりジュール熱の発生が大きくなります。この対策として、電解液を攪拌してワーク表面の熱を拡散させると共に、発生した熱を速やかに除去する冷却装置が必要です。
(5)特殊電流波形
一般に用いられている直流のほかに、特殊な電流波形の利用により、比較的高い温度での電解でも高い硬度の皮膜が得られます。