アルミニウムやアルミニウム合金に対する陽極酸化皮膜の種類は、非常に多く、その特徴も多岐に亘っています。
皮膜の特性を支配する大きな要因は、素材にあります。それは、皮膜生成の原理が電気めっきと異なり、素材のアルミニウムが電解により溶解して酸化され皮膜が形成されることにあります。それゆえ皮膜が厚くなるほど素材の溶解量は増大するのであります。また合金の組成や組織によって良質の酸化皮膜が容易に形成できるものと、特殊な方法を用いても困難なものがあります。
アルミニウム合金には、強度などその機能を高めるために組成の異なる多くの合金があり、それらは熱処理合金と非熱処理合金に大別できます。加工面から分類すると、板・棒・条などの展伸材、鋳物・ダイキャストなどの鋳物材があります。
これら合金の陽極酸化の難易度には、大きなひらきがあり、困難なものに対して様々な工夫が考案されてきました。一般に行なわれている陽極酸化皮膜の種類を【表1】に示します。
【表1】陽極酸化皮膜の種類
工業的に行なわれているアルミニウムの陽極酸化処理には、【表1】に示すように、浴種・電源波形・処理速度・使用目的などにより、さらに素材との関係において、無数の組み合わせがあります。
電解浴による分類については、現在最も量的に多いのが硫酸浴です。その理由は、皮膜が無色透明で、電解電圧が低く消費電力が小さいので、カラー化の容易さやコストが安いことです。耐磨耗性や特徴ある色調が必要とされる器物や機械部品などには修酸皮膜や修酸を添加した硫酸浴が使用されます。
クロム酸浴は指定のある航空機関係を除いて、殆ど他の産業では採用されていません。電源波形による分類は、連続して通電するオーソドックスな直流電解では良好な皮膜が得られない素材に対して、交流、交直重畳、パルスなどの電解が適用されます。
処理速度による分類は、電流密度による分類です。大電流を流すことにより皮膜の電解液への溶解を防ぎ成膜速度を速め、硬度の高い皮膜を形成させます。
以上の方法が、目的によって選択され商品化されています。