電気めっきと無電解めっきについて、その概要を解説しましたので、今回から、軽金属を主なる対象とした陽極酸化処理について解説いたします。
陽極酸化処理とは、電解浴中で製品を陽極(+極)にして電解処理して、酸化皮膜を形成する表面処理法です。アルミニウムやその合金製品に対する陽極酸化処理や処理した製品は、アルマイト処理またはアルマイト製品と呼ばれ、あまりにも有名です。
アルミニウムの陽極酸化処理は、同じ素材であっても硫酸、修酸、クロム酸、有機酸などの電解浴によって、また温度・電源波形などの処理条件によって、異なった特性をもつ皮膜が得られます。
その特性とは、陽極で発生する酸素によって多孔質で電気絶縁性、耐食性、耐磨耗性などの優れた皮膜が得られます。この皮膜の多孔質を利用して染色、着色や各種の機能性付与が行なわれ、反射板、鍋などの台所用品、日用品、建築部材(サッシュなど)、車両部材(電車の窓など)、内装・外装品(ミラーなど)、機械部品、光学機器、通信機、コンピュータなど広範囲の分野に利用されています。
陽極酸化処理は、アルミニウム以外にマグネシウム、チタン、タンタルなどにも行なわれています。しかし、これらはアルマイトといわれている陽極酸化皮膜とは異なり、酸化皮膜の電気的特性を利用して、電気を貯めるコンデンサーなどに使われています。
このように、陽極酸化処理には大きく分けると、二つの皮膜があります。前者のアルマイト皮膜といわれているものをポーラス型といい、後者のコンデンサーとして使われる皮膜をバリヤー型といっています。両者の皮膜の性質は全く異なります。本講では、表面処理技術の立場から、ポーラス型の皮膜について解説いたします。