Q
薄い材料の絞り加工でしわが発生するが?
A
絞り加工では製品形状から展開計算をして、ブランク(D)を決め、絞り率から絞り回数を決めていきますが、絞り加工の難易はこの段階では分かりません。加工の難易はブランク(D)と材料板厚(t)との関係から推定します。
これを相対板厚と呼んで、次のように計算します。
相対板厚=t/D×100(%)
この計算結果は0.1〜2.0の範囲にでることが多く、数値が小さい方が絞りは難しくなります。【図1】でその状態を説明すると、ブランク(D)は周長を縮めながら絞られていきます。このときに相対板厚が小さいほど、円周方向に働く圧縮力の影響によって、しわがでやすくなります。しわの発生を押さえるためには、板厚方向に圧縮力を働かせます。この力をしわ押さえ力と呼びますが、薄い材料では押さえすぎると材料が切れてしまいます。このように相対板厚が小さいときの絞り加工は、微妙な変化でしわが発生したり割れが発生します。
【図2】はブランクから最初に絞るときの金型(初絞り型)です。この金型でしわに影響する部分は(A)で示す部分です。絞りダイとブランクホルダです。この二つの部分で材料を押さえ絞り加工します。この時に両方の面は平滑で平行であることが必要です。この条件は相対板厚が小さくなるど要求が増します。特に絞りダイ面とブランクホルダの面の平行度は金型だけの問題に止まらず、プレス機械の精度にも関係してきます。平行度が悪いと部分的にしわがでたりします。最悪のときには、しわと割れが同時に発生することもあります。材料が薄くブランク径が大きな絞りは、このようなことから絞りの中でも特に難しくなってきます。