通常のせん断加工を普通せん断と呼びます。切り口面は「だれ」「せん断面」「破断面」「バリ」で構成されています。このうちの「だれ」「破断面」「バリ」は好ましくないものと考えられています。「精密せん断」とは、普通せん断での好ましくない部分を無くして、良好な切り口面を得ようとする加工法です。
精密せん断のいくつかを説明すると、
(1)シェービング加工
シェービング加工は、普通せん断された切り口面を薄く削り、良好な切り口面を得る方法です。削り量は材料板厚の3〜10%程度です。厚板になるとクリアランスが大きくなるため、1回にシェービング加工では良好な面が得られず、2回加工とすることもあります。このような小さな削り量を加工するため、クリアランスはできる限り小さくします。
(2)仕上げ抜き法
仕上げ抜きは、1回の加工できれいな切り口面を得る加工法です。抜きのクリアランスを「0(ゼロ)」に近づけて加工する方法です。そしてパンチ、ダイのどちらかの肩にR0.3程度の丸みをつけます。ブランク抜きであればダイに丸み、穴抜きであればパンチに丸みをつけます。
この方法ではきれいな切り口面が得られるのですが、ブランク抜きではダイに丸みをつける関係から、反りが大きくなることが欠点です。
(3)対向ダイスせん断法
ダイの穴の中にはノックアウトを置き、パンチはリング状をした突起を持ち、ダイの穴とほぼ同じ大きさの穴を持ち、穴の中にはダイ同様にノックアウトを持つ構造になっています。したがってパンチはダイの穴の中に入る形ではありません。
パンチは材料に食い込むように進行します。食い込んだ部分の材料は、リング状パンチの外側に押しのけられるように移動していきます。パンチは材料に食い込んでいきますが、ダイに入ることはできないので材料を完全に分離できません。材料の残り厚さが薄くなった段階でパンチ内のノックアウトが動き材料を分離します。
この方法ではだれも小さくきれいな切り口面が得られます。しかし、パンチとノックアウトが複動する必要があり普通のプレス機械では複動動作を作りだすことが難しいところがあり、専用の機械を必要とします。
(4)ファインブランキング
材料に高い静水圧(強い力で押さえる)をかけると延性が増大する性質があります。この現象を利用してせん断する方法です。
ブランク抜きしょうとする外周に、V突起を持ったストリッパでV突起を材料に食い込ませるようにして押さえながら、パンチで抜きます。抜きのクリアランスはやはり小さくします。ダイにはノックアウトが入れてあり、抜くときに材料を強い力で押さえています。
このように加工することで、きれいな切り口面を得ることができます。V突起を材料に押し込む大きな力を必要とするため、専用のプレス機械を必要とします。
シェービング以外の加工では、クリアランスを小さくして加工することが共通します。その上、材料を何らかの形で拘束することで、結果を引き出すようにしています。