入れ子式金型は【図1】に示す入れ子式(インサートタイプ)のプレートを採用した金型の総称です。入れ子式プレートは、ダイプレートとストリッパプレートに利用されることが多いです。この形式を使う金型には精密金型と呼ばれるタイプが多いのですが、誤差の累積という点から考えると、一体式のプレートより位置精度は落ちます。それなのに精密金型に採用されるには、次のような理由があります。
- (1)
- 入れ子部品を精度よく加工することができる。
- (2)
- 入れ子を動かすことで位置精度を調整できる。
の2点が上げられます。
最近の精密金型は、ストリッパ基準で金型を組立ることが多くなっています。ストリッパ基準とは、ストリッパでガイドされたパンチにダイを合わせることで、クリアランス等の関係を合わせます。入れ子式にすることで調整が容易になります。入れ子の作り方での変化を説明します。
- (1)
- 一体ブロックの入れ子は、穴の形状精度はワイヤカット放電加工(WEDM)等で作られますから、一体式のものと変わりません。位置精度を高めたいときに使用します。
- (2)
- 割ブロックの入れ子は研削で形状加工をするねらいのものです。穴の形状精度及び二番逃がし等の精度を高めたいときに使うものです。位置精度は一体式のブロックと同じです。
- (3)
- スペーサを使う入れ子は位置調整を容易にするねらいからの設計です。入れ子の位置調整はシム(薄い板)を使って行います。シムの扱いには熟練を要します。厚いスペーサを使用することで調整を容易にする改善をした入れ子方式といえます。丸ブロックは位置調整はできません。
入れ子式の金型ではダイ刃先が痛んだとき、入れ子のみを再研削します。研削した分のシムを入れることでレベルを合わせます。一体式では全体を研削するのでダイハイトが変化します。
入れ子式の金型は、入れ子の材質を耐摩耗性の高いもの(超硬合金等)を採用することで、金型寿命を延ばすことができます。
丸ブロックはこの面と再研削への対応に適したものですが、位置精度を高める目的での採用には問題があります。