熱可塑性プラスチックは、高分子材料であることが知られていますが、高分子の長さは「分子量」という単位で考えられています。分子量は、材料の種類や製法によって変動します。分子量が大きいほど、高分子の長さは長くなります。反対に、分子量が小さいほど、高分子の長さは短くなります。
分子量の違いによって以下のような物性値の変動の傾向があることが知られています。
分子量が小さい場合の傾向
○金型内での流動性が良好になる。
○シリンダー内での混練性が良好になる。
○金型内での冷却固化速度が速くなる。
○剛性が少し高くなる。
分子量が大きい場合の傾向
○引張強度が向上する。
○衝撃強さが向上する。
○耐熱性が多少改善される。
○疲労特性が良好になる。
○クリープ破断強度が良くなる。
○対薬品性が良好になる。
○ブロー成形性が良好になる。
○押し出し成形性が良好になる。
分子量は、バージン材と再生材でも変動します。また、素材にガラス繊維やフィラー等を混ぜた場合でも物性は変動します。
また、分子量は常に一定であるわけではなく、材料のロットや保管方法等によってもある範囲でばらついています。
射出成形加工で同一品質の成形品を生産しようとしても、このように材料自身にもある範囲のばらつきがありますので、いかにこれらのばらつきを抑え込んで成形加工ができるようにするか、金型や成形条件等のプロセス側での工夫が重要になります。
本来であれば材料自身の品質ばらつきを極小化できれば良いのですが、現実問題としては大変困難です。したがって、金型の開発ではばらつきを吸収できるような工夫や知恵をふんだんに盛り込んでおくことがポイントになります。