ポリグリコール酸(PGA)は、石油を原材料として合成される脂肪族ポリエステルで、生分解性の特徴を有するプラスチックです。
ポリグリコール酸の最大の特徴は、酸素ガスや炭酸ガスを透過させにくい性質に優れている点が挙げられます(ガスバリア性)。ガスバリア性が良好なプラスチックは、炭酸飲料やビール、薬品、液体調味料などのプラスチック容器が備えるべき特性として、重要な意味合いを持っています。
ポリグリコール酸の存在はかなり以前から知られてはおりましたが、工業的生産プロセスで大量に製造をすることが難しく、実用レベルでの採用はほとんどなされませんでした。
しかし、近年、日本の化学メーカーが大量生産方法の確立に成功し、市販レベルでの流通の見通しがつくようになりました。これをきっかけに、容器への適用が検討されていくものと推察されています。
ポリグリコール酸は、熱可塑性プラスチックで結晶性です。したがって射出成形加工が可能で、ブロー成形も可能です。成分としては、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)のみからなる、単純な構造のポリエステルです。融点は218℃です。
これまで生分解性プラスチックで、良好なガスバリア性を示す樹脂は開発されていませんでしたので、ポリグリコール酸との複合成形による付加価値開発など、新たな可能性が考えられます。同時に射出成形加工技術やブロー成形技術、金型設計技術などの開発も必要になってくるのは確実です。
飲料ボトルが生分解性に置き換わる日は果たしてやってくるのでしょうか?地球環境を保護していくためには、生分解性樹脂を広く活用していくことが必須であると思います。
これからもこの分野のプラスチック素材の開発はさらに続いていくことでしょう。欠けている物性を補完可能な樹脂開発が、世界のインテリジェンスによって現在も進められています。
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- 参考文献:『ポリグリコール酸の構造と物性』(佐藤浩幸)