プラスチックの強度を強化するために、材料にガラス繊維を添加したプラスチックが射出成形で使用されています。ガラス繊維は、それ自身がプラスチックよりも強度を有していますが、ガラス繊維のみでは耐衝撃性が低くもろい特性がありますので、プラスチックと混合されることにより、もろさの弱点を回避した成形材料として実用に耐えられるようになります。
ガラス繊維入りプラスチックは、射出成形の際に以下のような現象が発生することが知られていますので、使用に際しては留意が必要になります。
(1)配向の発生
ゲートからキャビティへ流入する際に、ガラス繊維が流れの方向に沿って並んでしまう現象が発生しやすくなります。この現象は、配向(オリエンテーション)と呼ばれています。配向の発生によって、成形収縮率が流れ方向と流れに直角方向で大きな不均一が生じます。
また、引張強度や圧縮強度が繊維の方向によって変化します。
(2)残存繊維長さの変化
ガラス繊維は、ある一定の長さの範囲に調整されてペレットに含まれていますが、成形加工時にスクリューで混練される際に、ある分量は折れてしまい、ランナーやゲートを通過する際にもある分量が折れてしまいます。
したがって、成形品に残存しているガラス繊維の長さによって、成形品の強度にはばらつきが発生する可能性があります。
(3)スクリュー、シリンダーの磨耗
ガラス繊維は、成形機のスクリューやシリンダー、逆流防止リングなどを引っかきながら流動しますので、ガラス繊維入り樹脂の場合には耐磨耗仕様のシリンダー、スクリューを採用することが推奨されます。
(4)ゲートの磨耗
金型では特にゲートの内面がガラス繊維によって磨耗します。ゲートの大きさが変動しますと成形条件が変化し、成形品の寸法やばりの発生状況が変わってきます。多数個取り金型ではゲートバランスが崩れてくる危険性があります。
(5)ガラス繊維の断面形状
ガラス繊維の断面形状は、円形断面や長方形断面、繭型断面などの種類があり、成形品のそりや変形、流動性、配向の発生状況などと密接な関係があります。