シクロオレフィンポリマーは、透明度が優秀で、耐熱性があり、金型の表面転写性も良好なため、レンズ類の射出成形品として採用事例が増えてきています。
フラットパネルディスプレイ(FDP)用導光板、光ピックアップレンズ、ディスクなどの光学部品に多用されています。薄型液晶テレビや携帯電話端末関連の光学部品への応用が急増しています。
その背景には、下記のような優れた特性があるからです。
1.優秀な透明性
アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂と比較して全光線透過率が優れていて、透明性が優れています。したがってレンズや導光板の機能としては、最適な特性を持っていると言えます。
2.金型内の樹脂流動性が良好
透明樹脂であるPMMAやPCは、射出成形時の金型内での樹脂流動性が悪く、成形加工が困難でしたが、シクロオレフィンポリマーはPCの4倍程度、PMMAの約1.5もメルトフローレートが良好ですので、低い充填圧力で射出成形が可能です。成形品に残留応力を残しにくく成形品の光学特性にも良い方向に作用します。
金型表面の微細形状の転写性にも良い影響を与えますので、マイクロストラクチャ形状の転写には適しています。
3.極小の吸水性
吸水性は0.01%未満と熱可塑性樹脂の中では最高レベルの特長を持っており、射出成形後の寸法安定性が良好です。
4.不純物が少ない
化学物質等の不純物が少ないため、食器類、衛生用品、薬剤容器、半導体関連機器等に採用されています。
シクロオレフィンポリマーの射出成形金型の設計に際しては、上記のような樹脂特性を最大限に引き出せるような配慮が必要になります。
例えば、キャビティの表面精度を最良の状態に確保するための鋼材の選定、熱処理管理、精密機械加工技術が重要になります。
また、金型の温度制御も重要になります。射出成形時の成形条件の把握、圧力管理なども品質安定には欠かせない要素になります。