液晶ポリマー(LCP、Liqud Crystal Polymer)は、良好な耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックとして電子部品、コネクターに採用されています。
液晶ポリマーは、成形品が薄肉であっても良好な流動性を示しているため、コネクター類などの薄肉小型精密成形品の射出成形も可能です。
表面実装方式(SMT)ではんだ付けされる部品では、今後、「鉛フリーはんだ」が環境対策として推奨される社会情勢があり、「鉛フリーはんだ」はSMT時の温度が260℃程度まで上昇させなければならないため、従来他の樹脂で使用されていた電子部品が液晶ポリマーに変更される例が増えてくると予想されています。
現在の日本での液晶ポリマーの需要量は年間9,000トン程度と推測されています(2006年)が、今後3年ぐらいの間には需要量は30%程度増加するという予測もあります。
液晶ポリマーは優良な耐熱性、薄肉流動性を有する反面、以下のような成形加工上の難点があります。
(1)ウエルド強度
液晶ポリマーは流動性は良好であってもウエルド部の密着強度が低いという欠点があります。金型設計上ではこのポイントをいかに克服する構造を採用するかが重要な部分になります。
(2)ブリスター
成形品をSMT時に昇温させると成形品の表面に微細な「ふくれ」が発生する場合があります。この「ふくれ」はブリスターとよばれており、いかにブリスターを発生しないで射出成形できる金型構造を採用するかも重要なポイントです。
(3)金型のメンテナンス
液晶ポリマーは、射出成形時にエアベントの詰まりが発生しやすいので、頻繁な金型の分解清掃が必要になります。メンテナンスフリー構造、メンテナンスしやすい金型構造の開発が必要になります。
(4)金型の耐磨耗性向上
液晶ポリマーは通常ガラス繊維を30〜40%程度含み、さらに特殊なフィラーを充填する場合もあります。これらのフィラーは金型部品の磨耗を助長し、ばりを引き起こす元凶となります。金型部品はフィラーによる磨耗に対抗できる硬度と表面処理が必要になってきます。