精密な成形品を得るためには、金型のキャビティ表面に加工されている形状や面粗度を、可能な限り忠実に転写させることが求められます。
表面形状の転写が問題となるケースとしては、以下のような事例が挙げられます。
- 鏡面仕上げを要求される光学部品(レンズ類)
- エッチングや梨地処理を美麗に転写したい成形品(化粧品ケース、装飾品など)
- 微細な表面形状を正確に転写したい成形品(マイクロ流路、導光板など)
表面の転写性は、主に次のファクターが関与しています。
- キャビティ表面の温度
- 流動する樹脂のスキン層温度と粘度
- 保圧
- ゲートサイズ
- 樹脂表面の結晶化度
- キャビティ内のガス排出状況
- ガラス繊維等添加物の分布状況
- キャビティ内の樹脂の流動状況(層流、乱流)
表面の転写状況は、電子顕微鏡で撮影することで精密に評価をすることができます。表面性状が厳格に問われる成形品では、このような評価をすることが必要です。
どのファクターが最も表面性状に関与しているのかを見出すためには、成形条件を変更したサンプルを、きちんと評価する実験をすることを推奨します。
一般的には、熱可塑性樹脂の表面性状の転写性を良好にするためには、射出流動している樹脂の粘度があるレベル以下に低下しない状態で、キャビティ内を充填させることがポイントです。つまり、樹脂の粘度を低下させないためには、樹脂温度を一定以上に保った状態で流動させることが必要になります。また充填速度が速すぎると、流路内でうずを巻いたりした非定常な流動が起きることにもなりますので、充填速度の制御も転写性に関連してくる場合があります。