[2023/3/30公開]
こんな人におすすめ
・射出成形におけるスクリュー清掃のコツを知りたい方
・スクリュー清掃の頻度や消耗具合の確認方法を知りたい方
・あると便利なおすすめグッズの紹介
射出成形加工は、樹脂をシリンダーで圧縮溶融し、高圧で充填する加工方法である。連続成形を続けていくと、スクリューには樹脂が炭化してこびりついていく。
この炭化物が、剥がれ落ちて成形品に練り込まれてしまう。
黒点、練り込み異物と言われる成形不良である。
この練り込み異物は、射出成形加工の仕組み上避けられないため、パージ材によるパージ作業やスクリュー清掃を実施して、都度除去が必要である。
本日は、スクリュー清掃のコツと3点セットメンテナンスのノウハウを解説していく。
スクリュー清掃は定期的に実施すると良い
射出成形加工において、どんな製品を成形しているかで、スクリュー清掃の必要性は大きく変わってくる。
黒色の汎用プラスチックを成形しているなら、練り込み異物の不良対策としてのスクリュー清掃が不要である。
ナチュラルカラーや透明色の樹脂を使用するなら、スクリュー清掃頻度は高くなる。
以下に、スクリュー清掃を定期的にするメリットを紹介する。
(1) 練り込み異物を予防でき、清掃が容易
スクリューにこびりついた炭化物の練り込み異物は、累計生産ショットに比例して増えていく。シリンダー清掃中は生産が停止してしまうので、清掃回数は最少にしたいが、炭化物が蓄積して練り込み異物が多発してしまうので、スクリュー清掃を計画する。 定期的に実施することで、蓄積している炭化物は少ないので、スクリュー清掃が容易に完了できるメリットがある。
樹脂の物性で清掃頻度は大きく変わることは念頭におくが、PPやPEなどの汎用樹脂は3カ月毎に、PCやABSなどは色替えに合わせて、PPSやポリサルフォンなどのスーパーエンプラは生産毎にスクリュー清掃をすることで、練り込み異物の発生を防止できるのでおすすめである。
(2) 消耗部品の確認は、目視
スクリュー清掃の目的は、練り込み異物の防止の他に、3点セット、スクリューのフライト部、加熱筒内の消耗度を点検することである。
構成部品の消耗度は、目視による点検が最も有効である。特に、3点セットの1つ逆止リングの消耗は、充填時のバックフローの原因になるため、消耗度の確認は重要である。
スクリュー清掃時短テクニック
スクリュー清掃時間は、そのまま成形機の稼働時間に直結するので、いかに効率よく清掃作業をするかが重要である。
以下に、スクリュー清掃の時短テクニックを紹介していく。
(1) 予備部品と交換する
最も効果的なのが、スクリュー、3点セットの予備部品を用意しておいて交換することである。
加熱筒からスクリューを抜いて、加熱筒内を清掃したら、すぐに新しいものを交換することで、メンテナンス時間を最少にできる。
(2) パージ材の適正使用
スクリュー清掃前にパージ材でパージすることで、スクリュー清掃時の作業負荷を低減できる。
パージ材を使用すると、スクリューをばらした後、パージ材を簡単に剥がすことができる。
その後のバーナーであぶる作業が容易になる。
(3) スクリュー加熱用のバーナーの火力
スクリューを加熱するバーナーの口径は、大きい方が範囲も広く燃焼効率も高い。
ガスの使用量は多くなるが、スクリュー清掃時間が最短にできるメリットがある。
特に、60Φを超えるスクリュー清掃では、火力の大きさが清掃時間に大きく関わる。
(4) チタンコーティング
炭化物の発生が多い樹脂には、3点セットのチタンコーティングが有効である。
3点セットに炭化物がこびりつくことは防げないが、コーティングすることで、炭化物が剥がれやすくなり、スクリュー清掃時間の短縮になる。
軽くバーナーであぶって、ワイヤーブラシでこすると簡単に落ちる。
バーナーで一部分だけ高温にあぶってしまうとコーティングが傷んでしまうので、バーナーの使い方に注意が必要である。
(5) 2人作業は2.5倍以上の効果
スクリュー清掃は、2人作業がおすすめである。メンテナンスの停止時間が一番のロスになるので、スクリュー清掃は人数をかけて、短時間に集中して行うとよい。
2人で連携して作業すると、2.5倍以上の効果がある。
特に、350t以上の中型成形機は2人作業、660t以上の大型成形機は3名以上で作業すると効果的である。
(6) おすすめグッズの紹介
スクリュー清掃は、停止時間が最大のロスであるため、清掃効率を上げることが重要である。
清掃時間短縮におすすめな商品を紹介していく。
シリンダーブラシ
加熱筒内の樹脂のこびりつきを簡単に除去できる。
電動ドリルに取り付けて回転することで、より効果的。
使用していた樹脂ごと、加熱筒サイズに合わせて取り揃えておくことで、最速でスクリュー清掃が実施できる。
コパガーゼ、ステンレスガーゼ
金属メッシュのスクリュー清掃用具。フェイスタオル位の長さでスクリューをこすりつけ炭化物を除去できる。
ハンドブラシのようなワイヤーブラシに比べて、スクリューへの密着性が高く、金属ガーゼが適度にこすれるので、効率よく除去できる。