プラスチック原材料の中でも最近、射出成形材料として使用される頻度が多くなっている材料としては、次のようなものがあります。当然に、これらの材料を使用する金型の新規生産も、増加していると考えて良いと思います。
(1)ポリカーボネイト(PC)
国内生産量41万トンと大量に生産されており、液晶テレビモニター、DVDプレーヤー、携帯電話筐体、導光板、TFT関連、電池パック、プリンター部品、自動車用照明部品などに採用されている。
透明度が良好で、高強度、高耐熱性であるが、成形加工性は悪く、流動性が低いので、高い圧力で金型内に充填させなければならない。金型温度も高く設定する機構が必要になる。
最近では、バルブゲートを使用することで、これらの問題を解決する技術も登場している。
(2)ポリフェニレンサルファイド(PPS)
国内生産量2万トンもの生産量になり、表面実装対応耐熱電子部品、光ピックアップ、自動車部品等へ使用されている。ガラス繊維を混ぜて使用する例も多い。流動性は良好である反面、僅かの金型の隙間でも流入しやすいのでバリが発生しやすい。金型温度は150℃程度にまで上げなければならない。
需要に対して生産が追いつかない状況が続いている。
(3)液晶ポリマー(LCP)
国内需要量は、1.7万トンであり、高い耐熱性を必要とする電子部品、機械部品に採用が増えている。金型温度は150℃程度まで昇温させる必要がある。ウエルド部分の強度低下が問題となる場合がある。流動性を改良して、この欠点をカバーするタイプの素材も開発されつつある。
(4)ポリアミド(PA)
いわゆるナイロンであり、PA6、PA66、PA46、半芳香族PA、芳香族PAなどがある。国内生産量は約25万トンである。
特に、最近実用化された半芳香族PAと芳香族PAは、耐熱性が良好で、高強度であり自動車用部品、電子用コネクターなどに採用がされるようになった。
まだ原材料価格が高いので普及の途上であるが、優れた特性を生かした成形品の開発が今後も進むものと予想される。金型の温度を高めとし、ガスベントの効果的配置などを盛り込んだ金型構造が必要である。
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- 参考文献:『平成16年の素形材工業・工学年鑑、7.エンジニアリングプラスチック』(関口勇 (財)素形材センター (2005年4月))