生分解性プラスチックの代表的な樹脂の一つとしてポリ乳酸があります。ポリ乳酸は、植物由来の生分解性プラスチックで、以下の合成プロセスによって化学合成され、また生分解作用によってリサイクルがなされます。
ポリ乳酸は、比較的硬く、ポリスチレン程度の機械的強度があり、産業用途での応用が10年程度進められてきましたが、強度と耐熱性が不十分なために、付加価値の高い工業部品にはなかなか採用がなされてきませんでした。
しかしながら、最近、ナノコンポジット技術を応用することによって、耐熱性の良好なポリ乳酸が開発されています。荷重たわみ温度が120℃レベルまで耐えられるため、熱水洗浄やスチーム環境下での連続使用が可能になってきています。
したがいましてワンウエイ食器(使い捨て食器)、リターナブル食器(給食等で繰り返し使用する食器)、パソコン筐体部品、OA機器筐体部品、ボトル容器、包装容器などに用途が開けました。
耐熱性のあるポリ乳酸は、その耐熱性を得るためには、金型のキャビティ表面温度を110〜120℃程度に保持しなければなりません。したがいまして、金型にはカートリッジヒーター加温装置、若しくは油温調構造が必須になります。
また、耐熱ポリ乳酸は、収縮率が大きく(12〜20/1000程度)コアにかなり強力に抱きつく性質があります。離型抵抗を小さくする金型設計と機械加工、表面処理が必要になります。したがいまして、突き出し構造を十分に検討する必要があります。
特に筐体、容器等の深物成形品では突き出しが極めて困難です。円滑な突き出しと成形品の耐熱性付与を実現可能な金型構造や射出成形加工方法は、各種技術開発が進められています。