医療用具にはプラスチックがたくさん使用されています。その生産方法としては射出成形が多数採用されています。
したがって、医療用具のかなりの部分は、金型を使用して生産が行われているとも言えましょう。
代表的なプラスチック製医療用具には、下記に示すようなものがあります。
- 注射器のシリンジ(注射筒):PP、PE
- 注射器のピストン:PP
- ピペットチップ:PP
- カテーテル:PVC、PC
- 採血試験管:PC
- 培養用シャーレ:PS
医療用具に使用されるプラスチック材料は、用途によって、薬事法や厚生労働省の品質規格を満足したものしか使用が認められていません。紫外線照射やガンマ線照射による滅菌・減菌処理に耐えられたり、人体に対する血液凝固反応やアレルギー反応などの臨床試験をクリアーした樹脂材料に限定されます。
また、基本的に使い捨てになりますから、燃焼処理において環境破壊を起こしにくい素材でもなければなりません。
金型は、錆びにくい材質で作られていることが推奨されます。したがって、ステンレス鋼やイオンプレーティング皮膜、硬質クロムめっき等でキャビティ、コアの腐食を防止する構造が多用されています。
また、大量に生産される成形品用には、バルブゲート金型も採用されています。
成形品の周囲にバリが発生しているものは品質不良となってしまいますから、可動側と固定側の位置決めガイドは精密なものを使用して、いんろう構造のコアピン類の異常摩耗を防止する工夫も採用されています。
成形品の品質を安定させるためには、キャビティ、コアの温度管理のしくみもデリケートに設計する必要がありますので、冷却回路やヒートパイプの構造には留意が必要です。 注射器の筒などでは、コアの内部の冷却構造が大変重要になります。
金型の表面に付着したガスややにの除去も品質管理上重要なポイントです。ガスベントの設定や強制吸引構造も採用されています。