熱可塑性プラスチックは、ご存知のように冷却固化する過程において成形収縮が発生します。
成形収縮の度合いは成形収縮率と呼ばれており、プラスチックの種類によって概ねの値が知られています。
ガラス繊維等の充填物(フィラー)が含まれていないナチュラル材料では、成形収縮は、あらゆる方向について、ほぼ均等に収縮が発生すると考えて、金型設計の際には、キャビティの寸法を計算していますが、ガラス繊維等が含まれている場合には話が違ってきますので、要注意です。
つまり、ガラス繊維の入っているプラスチックでは、成形収縮が全ての方向に均等に発生せず、流動方向に大きく依存することが知られています。
これは、流動の際に配向(はいこう)が発生し、プラスチックの分子とガラス繊維が一定方向にそろってしまうことが原因になります。
どのぐらいの数値で異なってくるのか、以下に一例を挙げてみます。
材料名 | ガラス繊維含有率 | 流れ方向収縮率 | 流れ直角方向収縮率 |
PPS/ポリフェニレンサルファイド | 30% | 0.3〜0.4% | 0.6〜0.7% |
LCP/液晶ポリマー | 40% | 0.1〜0.15% | 0.3〜0.5% |
つまり、流れ方向と流れに直角な方向では、2〜5倍もの成形収縮率の違いが発生してしまうことになります。成形品の寸法公差が厳しい場合や大きな成形品の場合には、このような差は見逃すことができないので、金型設計に際しては十分な配慮が必要です。
とは言っても、実際の成形品は、試験片のような単純な形状ではありませんので、キャビティ内の樹脂の流れは一様ではなく、分流したりして予測は困難です。
したがって、現実的にはCAEで流動解析を行ったり、試作金型を起工して収縮の実態を計測することを行うことが推奨されます。