プラスチック射出成形金型では、成形品を所望の品質で生産するための機能が求められますが、それと同時に最小限の生産コストで生産可能であることも要求されます。
プラスチック射出成形加工の成形サイクルは、下記のように定義されます。
成形サイクル(sec)t=t1+t2+t3+t4
t1:射出時間=充填時間+保圧時間(sec)
t2:冷却時間(sec)
t3:成形品取り出し時間(sec)
t4:金型開閉時間(sec)
成形サイクルを決定する因子の中で、最も大きなウエイトを占めるのが冷却時間t2です。
冷却時間は、溶融プラスチックがキャビティ内に充填され、ゲートシールしてから固化するまでの時間です。冷却時間は、金型のキャビティ冷却能力に左右されることは経験的に知られています。また、成形材料の種類や成形品の板厚にも左右されます。
いったい、どのぐらいの冷却時間が最適であるのかを金型設計の段階で予測することは、成形品の生産コストを見積もる上ではとても重要な事柄です。
最近では、CAEにより冷却時間を予測するソフトウエアも登場していますが、一般には、下記の実験式が冷却時間の予測に用いられています。
s:成形品の肉厚(mm)
α:キャビティ表面温度における樹脂の熱拡散率(mm2/sec)
α=λ/(c・ρ)
λ:樹脂の熱伝導率(kcal/m・h・℃)
c:樹脂の比熱(kcal/kg・℃)
ρ:樹脂の密度(kg/m3)
θr:溶融樹脂温度(℃)
θe:成形品取り出し温度(℃)
θm:キャビティ表面温度(℃)
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- 参考文献:『射出成形金型』(三谷景造 (株)シグマ出版 (1997))