今回は、少し技術的な内容から離れて、プラスチックの歴史について物語り風に記述してみましょう。
プラスチックが工業分野で大量に使用されるようになったのは、わずか60年ぐらい前の出来事でした。
それ以前には、天然樹脂を人類は使用しており、5000年ぐらい前には天然アスファルトを使用していた史実もあるようです。松やにや天然ゴム、ラック貝殻虫の分泌液(シェラック)などは、戦前では貴重な工業材料でした。
1869年には、アメリカ合衆国のジョン・ハイアット氏がニトロセルロース(火薬の原料であって、木材の繊維を硫酸と硝酸で溶かして作る)に樟脳(しょうのう)を加えると、象牙に似た物質が得られることを発見しました。
彼は、ビリヤードの球を作る材料を研究している最中に、この発明をしたそうです。
この物質は、「セルロイド」と命名され、様々な用途に使用されるようになりました。
1907年には、ベルギー出身のべークランド氏が石炭から「ベークライト」を作る方法を発明しました。ベークライトは、電気絶縁材料として大ヒットし、今日でもたくさん使用されています。
1920年には、ドイツのシュタウディンガー氏が高分子説を発表しました。後にこの説により彼はノーベル化学賞を受賞しています。
1921年、世界で始めてドイツで射出成形機が発明されました。プラスチック射出成形機が発明された結果、金型も必要になり、この頃に金型産業が産声を上げたと言えましょう。
1931年には、ドイツでポリ塩化ビニル樹脂(PVC)が工業化、1933年にはイギリスでポリエチレン樹脂が発明されました。
そして、1935年にはアメリカ合衆国のカロザス氏がポリアミド樹脂を発明し、デュポン社が1939年から「ナイロン」という名称で大量生産を開始しました。
その後、石油化学産業は、世界の重要産業に成長し、今日の自動車産業、電子産業、情報通信産業、食品工業などの分野でなくてはならない地位を占めるに至りました。
必然的に金型の需要も増加し、金型生産技術も日進月歩し、今日レベルに到達したのです。
- ※参考文献
- :『「もの」と「ひと」シリーズ7 プラスチック』(内田安三 (株)フレーベル館)