プラスチック射出成形加工では、成形品を金型から確実に取り出せる必要があります。
射出成形加工の最大のメリットは、無人で量産加工ができる点になりますので、成形品がもし、金型の中に残ってしまうと、それを人手で取り出さねばならないとすれば、成形機の人員が常時必要になってしまい、無人加工ができず人件費が膨大にかかってしまうことになります。
万が一、成形品が金型に残ったまま金型を閉じてしまった場合、最悪のケースではキャビティやコアを破損して大きな経済事故につながってしまいます。金型を破損してしまうと簡単には修復ができない場合がほとんどです。ですから、成形品は100%金型から取り出せるように金型を調整しておかなければならないのです。
では、どうして成形品が金型の中に残ってしまうのでしょうか?成形品が金型の中に残ってしまう現象を離型不良(りけいふりょう)と呼んでいます。離型不良は、以下のような原因が絡み合って発生します。
- (1)
- 成形品の収縮
- (2)
- 成形品の肉厚
- (3)
- 形品の内径
- (4)
- 成形材料のすべりやすさ
- (5)
- キャビティ、コアの表面あらさ
- (6)
- キャビティ、コアの抜き勾配
- (7)
- 型開き時の成形品の表面温度
- (8)
- 突き出し速度
- (9)
- 突き出しピンの本数と配置
- (10)
- 成形品のコーナー形状
- (11)
- 成形品とキャビティ、コアの間の真空状態
- (12)
- ガラス繊維などの配向
離型不良は、発生してしまった時にはその対策を講ずるのが意外と大変ですから、金型設計をする際に初期検討で十分に配慮をしておくことが重要です。具体的には、成形品の形状や素材、ゲート位置、抜き勾配、成形品の高さ、スライドコアや傾斜ピンの配置、成形品の肉厚などを十分に検討し、離型不良がおきそうな場所をいかに予見できるかがポイントです。予見できなければ対策の立てようがありませんので、さまざまな過去の離型不良のサンプルや不良解析レポートなどをよく理解をしておくようにするのが大切です。
ということは、不良が発生した際の履歴レポートがきちんと構築されていることが必要になります。離型不良のように複数の要因が絡み合って発生する不良については、解析で見つけることはなかなか困難です。ベテラン設計者は暗黙知で予見できますが、経験が十分でない場合にはこれは難しいです、そのためには不良現象を的確に記録したデータの蓄積を組織的に行っておくことが求められます。