[2023/4/10公開]
こんな人におすすめ
・射出成形工場の、見える化が急務な理由を知りたい
・効率改善を何からどんな風に進めればよいか知りたい
・各部署の連携が取れていなく、ムダが多い気がする
射出成形は、工場内の多くの人が協力し合って仕事をしている。
・受注
・生産管理
・製造
・品質管理
・倉庫保管、出荷、在庫管理
・人事、総務など
人が多くなれば生産性は上がる一方で、統率が取りにくくなったり、責任の範囲が不透明になる。
また、長年の慣習や、暗黙の了解など、独自のルールができ、各部署の最適化は進むけれど、工場全体を見た時に、最適ではないことも多い。
このような、視界の狭い偏りをなくすには、工場全体で、同じ地図と方角を見ることが重要である。
目標や課題、工場の受注情報、スキルや経験を、皆で共有することで連携を強化していく。
本日は、射出成形工場における、「見える化」について、解説していく。
射出成形工場において、見える化が急務な理由
射出成形工場の業務は多岐にわたる為、一人一人が「誰が何をいつまでにするのか」をしっかりと把握し、お互いに進捗を確認しあうことが重要である。
射出成形工場では、連続で生産が続いていくため、前もって製造や出荷の準備をしていかないと、たちまち生産がストップしてしまう。
多くの業務を計画的に準備するには、各部署が連携し、その日にやるべきことを必ずやることがポイントである。
これまでの射出成形工場は、生産の負荷に対して、人をかけることで、調整していた。しかし昨今は、人手不足でなかなか人が集まらない。
受注をいただいても、人手不足を理由に失注し、そのまま事業縮小せざるを得ない状況に至ることもある。
最少の労力で、最大の利益を生む仕組み作りが急務である。
各部署、各個人が好き勝手に仕事をすることなく、情報を共有して、うまく連携していくことがポイントになる。
QCDの見える化
重複作業を排除し、最少労力で最大の利益を出す仕組み作りには、皆が必要な情報を共有することが基本になる。
ものづくりの基本は、品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)を守ることである。
この3点の情報は、信頼を築くうえで最重要ポイントになるため、社内および客先、取り引き先で皆が同じ情報を共有するべきである。
QCDの見える化で考慮すべきポイントは以下のとおりである。
報連相の徹底
情報伝達を素早く正確に行うことが重要である。客先から入った情報はすぐに関係各課に連絡する。また、常に納期を意識し、トラブルがあればすぐに報告相談をする。
射出成形工場では、部署の中だけでは対応できない業務やトラブルが多く、その対処が遅れると取り返しの付かないことになってしまうので、素早く報連相をすることが重要になる。
【複数の部署に影響を及ぼす業務、トラブルの例】
・原料入荷の延期
・量産中の金型破損
・製造中のでき高、検査後の歩留まり、在庫数の実数把握
・客先からの成形不良のクレームなど
また、情報の真偽が曖昧では対応が変わってしまうため、「○○だろう。■■だったら、△△なら」という推測はせず、事実ベースで進捗確認をすることがポイントである。
手順書、マニュアル、指示書の整備
成形品の品質規格、作業手順書、生産指示書、出荷指示書など、帳票類の整備が重要である。
作業担当者、管理者が常に同じ意識を共有するには、作業の標準化が必須である。
射出成形工場には、性別、出身地域、国籍などが異なるさまざまな人が働いているので、認識の違いによるトラブルが良く起きる。
帳票類を整備し、誰もが理解できるように、しっかりと伝えることが重要である。
スキルの見える化
射出成形の技術は、経験を積み上げて習得していくものが多いため、属人化してしまうものである。特に成形不良のトラブルシューティングは、その場の状況から不良原因を予測して、臨機応変に設定変更していくスキルが必要である。
こういったベテランのカンコツを見える化することが、社内の技術力UPに大きく役立つ。
成形不良ごとのトラブルシューティングリストや、型換え作業の動画マニュアルを作るなど誰がやっても同じ効果が得られるような仕組み作りが、より良いものづくりを支えることになる。
また、一人一人の習熟度が一目でわかるように、力量表を作成することが有効である。
個人のスキルを見える化するとともに、最終目標との差が明確になるので、中長期的な人材育成に役に立つ。
射出成形作業を例にすると以下のように作業を細分化し、数値で評価するとよい。
【力量表に盛り込む作業の例】
・準備工程:予定確認、原料準備、資材準備、帳票準備
・原料段取り:成形機ホッパー・原料タンク・配合機清掃、生産終了時の残り調整
・成形工程:条件の呼び出し、パージ作業、立ち上げ、条件調整
・検査工程:外観検査、抜き取り検査
・メンテナンス:成形機・取出し機グリスアップ、金型オーバーホール、スクリュー清掃
【評価点】
0:作業できない
1:手助けや指示を受ければある程度できる
2:問題なく作業できる
3:指導できる
ムダの見える化
定期的に、業務ごと、部署ごとに業務内容の洗い出しをすることが重要である。
射出成形工場では、業務ごとに作業手順が決まっているものの、抜け漏れがないように、または不良トラブルの対策として、どんどんルールが厳しくなってしまう。
一方で、改善や恒久対策がされたのに、確認作業をしているというような、本来の意味が失われた無意味な作業が継続していることがある。
このように形骸化した業務を見える化するには、「この業務はなぜやる必要があるのか?」と、目的が明確かどうかを確認することが重要である。
視野を広げる
今行っている作業の成り立ちや、過去のクレーム内容などをしっかりと把握することがポイントである。
視点を変える
また、中途採用者や新人の着眼点を活かすこともおすすめである。
既存の凝り固まった社内のやり方を、見る目を変えることで改善に繋がる。
作業負荷の見える化
仕事は、偏りが出てしまうものである。一人ひとりの得手不得手や、請け持っている部署の仕事量、人員配置、客先即納要求など、さまざまな要因によって、ムラがでてくる。
責任の所在を明確にすることは、ルール作りの基本ではあるが、状況に応じて、お互いがサポートできる体制が望ましい。
サポートし合うには、誰がどのくらい作業を抱えているのかを見える化する必要がある。
朝礼や引き継ぎを活用
朝礼や引き継ぎをうまく利用して、前もって皆に共有しておくことがポイントである。
事前にわかっていれば、先に準備したり、予定を合わせて一緒に取り組むことができ、ムラを解消できる。
定期的な業務分掌
仕事量の偏りは、大きくなっていくものである。どうしても特定の人に集中してしまう。
定期的に、ムラを解消するために、分担の見直しを行うべきである。
課題と目標の見える化
ものづくりは、効率を追い、利益率を上げていかなければいけません。安定した利益を得るには、現状把握と目標設定がポイントである。
理想は掲げても構わないが、闇雲な目標ではいつまでたってもその理想には近づけない。
しっかりと今いる状況を分析して、実現可能な目標を部署単位で設定していくべきである。
課題を見つけるには3現主義
現在の状況を掴むには、「現場に行って、現物を見て(触って)、現実を知る」の3現主義に従うべきである。
机上の空論ではなく、ものごとをよりリアルに捉えるためには、解像度の高い情報が必要である。
目標は数値化する
目標は、必ず数値で評価できることがポイントである。期間内に達成できたかどうか、あるいは何%達成できたかどうかを、客観的に評価することである。
「不良をなくすようにルールを守ろう。」ではなく、「今期3件だったクレームを0件に削減しよう。」がより良い。
数値化することで、やらなければいけないことが明確化される。
まとめ
射出成形工場における見える化を、解説してきた。
見える化は、不良削減や、効率アップの手段であることを忘れてはならない。
部署ごと、業務ごと、ひとりひとりのスキルなど情報をシェアして、サポートし合うことが基本である。
見える化を活用して、より良いものづくりをしていこう。