射出成形機を、成形材料の種類・射出装置の構造・型締装置の構造の観点から分類し、イラストを交えながら分かりやすく解説していく。
まず初めに
まず初めに射出成形とは、
- プラスチック材料に熱と圧力を加えて溶融する
- 流動状態のプラスチック材料を計量する
- 密閉された金型内に高速射出、充填する
- 冷却固化する
- 製品を取り出す
の工程をする機械である。
射出成形機は、大きく分けて型締装置と射出装置でできている。
- 型締装置:金型を開閉したり、完全な密閉状態に保持する装置
- 射出装置:プラスチック材料を、溶融・計量・充填する装置
そんな射出成形機の基本的な種類を紹介していく。
成形材料の種類による射出成形機の分類
使用する成形材料により、
- 熱可塑性(ねつかそせい)プラスチック用
- 熱硬化性プラスチック用
の大きく2つに分けられるが、一般的に射出成形と言った場合、熱可塑性プラスチック用の射出成形機となる。
射出装置の構造による分類
1. プランジャー式
加熱シリンダー内の成形材料をピストン形のプランジャーで加圧して射出する成形機。1960年代の初め頃までは一般的であったが、現在では特殊な用途にしか使われていない。
- ホッパー内に補給された材料は自重で落下する
- 計量器は射出シリンダーと連動して一定量の材料を計量する
- 射出シリンダーがさらに前進し、材料は加熱シリンダーとトーピードの間を溶融しながら射出される
※トーピードは、形が魚雷に似ていることから名づけられた。画像では簡易的に記載しているが、実際のトーピードには材料が通る道が細く複数あり、均一に材料が溶融する様な構造をしている。
2. プリプランジャー式
プリプランジャー式射出成形機(俗称:プリプラ式射出成形機)は、以下2本のシリンダーを組み合わせた構造となっている。
- プリプランジャー用加熱シリンダー
成形材料を加熱して溶融するための予備可塑化(Pre-Plasticatingプリプラスチケーション)用シリンダー - 射出加熱用シリンダー
溶融材料を射出する用のシリンダー
プリプランジャー用加熱シリンダーの構造によって2タイプに分類される
(1)プランジャープリプラ式
成形材料の予備可塑化に、プランジャー式射出成形装置とほぼ同じ構造のものを使用している。
- 予備可塑化用シリンダーからの溶融材料を射出用加熱シリンダーに送り込む
- 所定量を計量する
- 射出用シリンダーで射出する
この装置での1ショット分の計量は、射出用加熱シリンダー内に送り込まれた溶融材料の反力による射出プランジャーの後退量を、リミットスイッチによって規制して設定する。
(2) スクリュープリプランジャー式
成形材用の予備乾燥に、スクリュー式押出装置を利用したものである。
- 予備可塑化用シリンダーのバンドヒーターと、スクリュー回転のせん断熱によって溶融する
- 溶融された成形材料は、射出用加熱シリンダーに送られる
- 所定量を計量する
- 射出用シリンダーで射出する
スクリュープリプランジャー式射出成形機は、プランジャープリプラ式射出成形機に比べて、材料を均一に溶融できることが大きな特徴である。
・メリット
射出中に次ショットの可塑化ができるので、可塑化能力を大きくできる。PE・PPなど熱分解を起こす恐れの少ない材料でのハイサイクル成形には有効となる。
・デメリット
2本のシリンダ-を有するため、材料換えに手間がかかる。各シリンダーの接続部には逆止弁が必要なので成形樹脂が滞留しやすく、熱分解を起こしやすいPC・塩ビなどは不向きである。
3. スクリュー式
1本のスクリューに、成形材料の可塑化・混練・計量・射出の機能を持たせたもの。プリプランジャー式に対して、スクリュー・イン・ライン式とも呼ばれる。現代における最も代表的な構造である。
型締装置の構造による分類
射出成形機の型締装置の役割は以下2つである。
- 成形機に取り付けられた金型を開閉する
- 金型内に射出された高圧の溶融材料によって、金型が押し開かないよう締め付ける
型締装置の基本的な構造は、固定盤(固定プラテン)・可動盤(可動プラテン)・4本のタイバー・型締めシリンダー(型締モーター)である。可動盤は、タイバーに支持されて可動する。金型の重量によりタイバーはたわむため、十分な剛性が必要となる。
1. 直圧式
油圧シリンダーによって、直接的に型締力を発生させるもの。油圧シリンダーに作動油を出し入れし型締ラム(ピストン)と繋がった可動盤を動かす。
2. トグル式
トグル機構と呼ばれる力の拡大装置(関節の様なもの)を使用して型締め力を発生させるもの。クロスヘッドとトグルリンク(アーム)を動かし、繋がった可動盤を連動させる。
3. トグル・直圧式
トグル機構と直圧機構を組み合わせたもの。
4. メカニカルロック式
大型機で使用され、直圧機構によって金型を閉じた後、タイバー(ステー)または主ラムをくさびで締め付けるなどして型締め力を保持する。ダイレクトロック方式とも呼ばれる。
射出装置と型締装置の組合せによる分類
- 横型成形機
射出装置と型締装置が横並びに配置されたもので、現在最も多く使用されているタイプ - 竪型(たてがた)成形機
射出装置と型締装置が、垂直に並んで配置されたもの - 射出装置が複数のもの
射出装置が2本・3本配置された射出成形機。2色・3色射出成形機、サンドイッチ成形機などがある - 型締装置が複数のもの
数組の型締装置に対して1組の射出装置を配列したもの。ロータリー式射出成形機はその代表例。