射出成形の製造工程は、プラスチック原料を原料タンクに投入することから始まるが、原料タンクが空、もしくはホッパー口から供給がされないと材料切れとなり、製造がストップしてしまう。今回は、材料切れが及ぼす影響、その原因と対策について解説していく。
材料切れが及ぼす影響
(1)成形停止
原料が供給できない状況となり、計量異常で停止する。
(2)成形不良
材料切れの状態で成形された製品は、計量が適切にできておらず充填不足や重量不足になったり、計量時間が伸びることによってガスによる外観不良が起こる。また、加熱筒内には数ショット分の原料が滞留しているので、前品までさかのぼって品質保証ができない状態となる。
(3)再稼働のムダ
射出成形の基本は連続成形であるが、一度でも材料切れを起こしてしまうと再稼働しなくてはならない。パージ後に成形を再開し、品質が安定するまで捨てショットを行うので、この間は良品取りができない状態となる。再稼働には原料費・光熱費・人件費がかかり、利益を引き下げる原因となる。
(4) 二次災害
通常の業務に加えて材料切れ対応をすることで、本来なら起こらないポカミスが起きてしまったり、焦りによる事故を引き起こしてしまう可能性がある。
材料切れの原因と対策
なぜ材料切れは起こってしまうのか、人・粉砕材・機械設備の3つ視点から、主な原因と対策を紹介する。
原因1:人
- 作業者による原料投入忘れ(ポカミス)
→投入指示書やチェックリストなどに記録することで、リスクの軽減を図る。ただし、恒久的な対策とはならない。
原因2:粉砕材
粉砕リターンしている成形品は、ホッパー口で粉砕材が悪さをすることがある。
- 詰まっている粉砕材の状態
- ホッパー口がどのように詰まっているか
を確認する必要がある。
- 粉砕機の刃が消耗してミスカットが出ている場合
→粉砕機の点検修理を行う - スプルーの形状と粉砕機の刃の相性が悪い場合
→成形品スプルーとの相性を見直し、適正な粉砕機を選定する - 粉砕材の混合比率が多すぎることにより、ホッパー口で詰まっている場合
→混合比率を見直す
原因3:機械・設備
- ホッパー口のシャッターが、成形機の振動で閉じてしまう場合
→シャッターを固定する - 原料ホースの空気穴がずれてしまった場合
→空気穴を固定するか、ホッパー内レベルスイッチに連動するアラームを取り付ける - ローダーの粉塵タンクがいっぱいで吸い上がらなかった場合
→粉塵タンクを定期に清掃し、ホッパー内レベルスイッチに連動するアラームを取り付ける - ローダーの電源(スナップスイッチ)と原料ホースがぶつかり、OFFになってしまった場合
→ホースに当たらない様に、電源スナップスイッチをコントロールボックス内に移設する
材料切れが及ぼす影響と、その原因と対策について解説してきた。対策を先送りにせず1つずつ実施していくことで、材料切れは防ぐことができる現象である。