どの現場でもミスやトラブルは付きもので、小さいミスから、怪我をしてしまう事故まで、大小さまざまあり、その原因は多岐に渡る。
- 成形機や周辺機器の消耗・劣化によるもの
- 業務負荷の集中によるもの
- 新人による作業、久しぶりの作業、別担当者へ引き継ぎをした作業
- 作業内容を変更したこと など
ミスやトラブルは1つでも発生すると、製造中断/納期遅延/設備破損/怪我などを引き起こしてしまうので、ミスやトラブルが起こりにくい、安全安心な職場作りが求められる。
また、ミスやトラブルを1つでも減らせれば、そのまま利益に直結する。
今回はミスやトラブルの中でも、対策しやすく即効果の出る【ポカミス】に焦点を当てて解説していく。
ポカミスとは?
ミスやトラブルの中でも、ポカミスとは具体的に何を指すのだろうか?
ポカミスとは、
- ついうっかり
- 気を付けていたけれど間違えてしまう
- 不注意のミス
- 順番を反対にしてしまった
- 忘れていた など
初歩的なミスのことを指す。
ポカミスが起きる原因とは?
ポカミスは「なぜ」起こってしまうのか解説していく。
原因は大きく分けると、人起因・作業手順起因・環境起因の3つに分けられる。
① 人起因
どんな作業も人が行う。たとえ機械が作業するとしても操作するのは人である。
- 疲労度
- 仕事の忙しさ
- 体調/精神状態 など
人は不安定なものである。
いつもならできる基本的な作業でも、疲れていて作業が重なると、いくら注意していても、ついついミスを起こしてしまうものである。その人個人の怠慢と原因付けてしまえば、全てのミスは人に集約してしまう。
② 作業手順起因
射出成形工場では、段取替え・設備メンテナンス・検査・納品など、いろいろな業務がある。
段取替え1つとっても、その中には
- 金型交換(吊り込み、温調ホース繋ぎこみ)
- 加熱筒の清掃、パージ作業
- 取り出しチャック交換
- 成形条件入力
- 立ち上げ など
いくつもの工程があり、それぞれに作業手順が決まっている。
決まっているはずの作業手順だが、
- 作業が分かり辛い
- 紛らわしい
- 注意ポイントが不明確 など
ポカミス原因が作業手順にある場合、「ルールが徹底されてない」もしくは「そもそも守れないルール」であることが多くある。
③環境起因
いくら人が気をつけていても、いくらルール通りに仕事を進めていても、
「環境」が整っていなければ、ポカミスは起こる。
- 現場の整理整頓ができていない
- 危険な工場レイアウトになっている
- 暑さ、寒さ、結露の対策がされていない など
不規則、不安定な環境は、ポカミスの原因となる。
ポカミスを減らす5つのポイント
どうしたらポカミスは減らせるのだろうか?ただ闇雲に「注意して作業しましょう」と言っても、効果は低く再発してしまうので、ポカミスを減らすポイント5つを解説していく。
① 後回しにせず都度対処する
まずは、発生したポカミスに対してその都度対処しよう。
業務が忙しかったから、大きな事故にならなかったから・・・と、その発生を「無かったこと」としてしまうと、あなたが再度同じポカミスをしなくとも、他の人が必ず同じポカミスをすることで、再発してしまう。
都度対処のポイント |
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ポカミスが起こった時、もしくはポカミスが起こりそうと思ったら、後回しにせずその都度対処しよう。忙しくて対処できない場合には、ノートや手帳に書き留め、日を改めて対処しよう。 |
② 人起因にせず、原因分析を行う
ポカミスを個人の怠慢によるものと原因付けてしまうと、全てのポカミス原因は【人】に集約してしまう。
例えば、
- ついうっかり押し間違えた
- 気付かずに作業してしまった
- 疲れていて忘れてしまった
上記のポカミス原因は【人】に起因していると結論付けて良いのだろうか?ポカミスの根本的な原因を追求していこう。注意しても、ポカミスは起こってしまうので、
・分かり辛い作業方法 ・現場の作業スペースが狭く作業し辛い など人以外の視点でポカミスの原因を追究していこう。
原因分析ポイント |
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人起因にせず、広い視野で深く原因追求をしていこう。 |
③ ポカよけ
ポカミスが起きないよう、設備や機械などのハード面で、誰が作業しても間違えないような対策(ポカよけ)をすることが重要である。
例えば、金型ホットランナーの配線繋ぎこみにおいて、ヒーター線とセンサー線は何本もあり、一般的にコネクター接続になっている。コネクター形状をあえて異なる形状にするなど、ヒーター線とセンサー線を繋ぎ間違えないようなハード面でのポカミス対策がされているケースがある。
ポカよけポイント |
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間違えやすいところはハード面で対策しよう。 |
④ 万もし時のサポート
人がミスをする前提で、万が一、もしかして、ポカミスをおかした時には、機械や環境でサポートすることができる。インターロックがそのサポート機能である。
- 成形機のパージカバー/安全ドア
パージ作業時に、パージカバーが開いている状態では、スクリューは前進しない。
パージカバーが開いている状態でスクリューが前進し、ノズルから樹脂が吹き出すことによる怪我や事故を防ぐために、成形機メーカーが付けた安全機能である。成形機の安全ドアも同様に、開いた状態では、金型開閉動作は操作できない。インターロックにより、簡単にポカミスを予防できる。
万もしポイント |
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ポカミスが起こる前に止めよう。ハード面でサポートをしよう。 |
⑤周知徹底
最後のポイントは、周知徹底です。
ポカミスが起こった、起こりそう、処置中など、ポカミスを職場内で共有することが大事である。
- こんなポカミスが起こったので、対処中です。
- ここがポカミス起こりそうだったので、インターロックを取りました など
逐一共有しよう。
共有することで、ポカミスをきちんと対処するという職場の習慣作りにも繋がる。
周知徹底ポイント |
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職場内で周知徹底し、チームでポカミス対策をしよう。 |
現場ですぐできるポカミス対策3選
① 間違いやすい接続(電気、水、エアー)
ホットランナーのコネクター接続をはじめ、機器を接続するプラグは【ポカよけ】しよう。ハード面での処置は非常に効果が高く、「誰がやってもミスのない作業」に改善できる。
例)金型ホース(冷却水、エアーエジェクター)
金型の冷却水ホースとエアーエジェクターホースに、タッチチューブを使用している工場が多い。エアーエジェクターの回路に冷却水ホースを繋いで水を流してしまったら、金型入れ子から水が吹き出す。こうなってしまうと、金型を成形機から降ろして、オーバーホールしないと錆びてしまう。
処置としては、冷却ホースとエアーエジェクターホースの色を変える方法もあるが、そもそもホース太さが同じであることが問題である。冷却ホースをΦ10、エアーエジェクターホースをΦ8にすることで絶対にポカミスは起きない。
② インターロック
射出成形機のパージカバーのように、各所インターロックを取る。
例)製品コンベアONのインターロック
取り出し機で取り出した製品をコンベアに並べるとする。コンベア電源がOFFになっていると、製品がコンベア上に重なっていき、数ショット後には押しつぶして取り出しチャックを壊してしまう。この事例は非常に多く、取り出しチャックは、金型ごとの専用品で制作費は50万円を超えるものも多いことから、現場の悩みであった。
そこで、取り出し機のインターロック回路に、コンベアONを組み込む。コンベア電源をONにしていないと、取り出しチャックはコンベアに下降せず、そのままコンベア上空で待機する。これならコンベアをONにし忘れることによる、取り出しチャック破損のポカミスを防げる。
③環境改善
例)カッターで指を切る怪我
刃を出したままのカッターが作業台から落ちそうな時に、慌てて掴もうとしたことで怪我が起きたケースがあった。カッターの刃をその都度しまえば良いのだが、作業中にカッターの刃は仕舞わないことも多くある。つまり刃が出たままの状態(環境)が原因ということである。この場合、使用時以外は刃が自動的に引っ込むカッターなど、安全対策がされているものを導入することで、安全な環境に改善できる。