金型の寿命を延ばしたり、金型破損によるお金や時間のロスを防ぐ為には、メンテナンスは必要不可欠である。また、金型が破損した場合は、適切な対処をすれば被害を最小限に抑えられる。ここでは、破損の種類と修理法、金型の磨き方について解説をする。
金型の破損と修理法
金型の破損の種類
金型は、成形品をつくる上で必要不可欠なもので、高価である。金型を破損させて使えなくなってしまうと、お金や時間に大きなロスを生じさせてしまう。もちろん破損させないのが一番だが、トラブルを完全にゼロにするのは簡単なことではない。破損トラブルに遭ってしまった場合は、適切な対処をして被害を最小限に抑えよう。破損の種類としては、主に以下の3つがあげられる。
表1.主な金型破損の種類
損傷 | 摩耗 | 破断 |
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キズなど、使っている間のトラブルによって起こるもの | ピンのすり減りなど、長い期間使っている間に起こってしまうもの | ピンの折れ、金型のかじり等、構造や扱い方の問題によって起こるもの 金型が使用できなくなるので、抜本的な解決が必要 |
破損には必ず原因があるので、同じ破損を繰り返さないよう原因を探ろう。特にピンが折れてしまうというような重大な問題の場合は、金型の構造やピンの材質の再検討など、根本的な対策が必要となってくる。生産を再開させるために場当たり的な対応も必要だが、再発させないためにも生産に並行して問題解決にあたろう。
金型に関するトラブルの対処法
トラブルの対処法として最も無難なのは、金型製作者に修理を依頼することである。金型の構造を知り尽くしているうえに、トラブルへの対応実績も豊富なため適切な対応をしてくれる。対応したことのあるトラブルであれば解決も速い。破損が重度な場合は金型製作者に修理依頼をしよう。破損が軽度な場合は、自社で対応するのも一つの手段である。費用や時間をかけることなく修理できるので、稼働状況などに応じて選択する。比較的軽度な破損としては、ガイドピン・リターンピンといったピンの摩耗である。ピンやブッシュなどの摺動部は、使っていると次第に摩耗していく。「成形時の音が変わる」というようなサインが出たら交換という手もあるが、交換頻度はあらかじめ金型製作者に確認しておくと安心である。
部品の交換で済む破損ぐらいであれば、自社で行っても問題ない。ただし、金型の大きなキズやかじりなどは、専門技術がないと対応が困難となる。これらはそのまま使っていると問題がより大きくなる恐れがあるので、早めに金型製作者に相談しよう。
表2.金型の大きな破損
キズの修理方法としては以下のようなものがある。必要な設備がある場合は、自社で修理することも可能である。
表3.主なキズの修理方法
肉盛り修理溶接 | 肉盛り修理溶接では、出来たキズ部に肉盛り溶接をして、キズを埋める。ただし、一般的な溶接では、熱が入ってひずむ恐れがあるので、レーザ溶接のようなひずみを抑えられる方法を選択する。 |
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インサート修理 | インサート修理は穴部にキズが入ってしまった場合に、フライス盤などの機械加工で削り出し、大きくなった穴にインサートを埋め込み修理する方法である。 |
拡大修理 | 拡大修理はインサート修理と同様に、穴部にキズが入ってしまった際に行う。元々空いている穴よりも大きな穴に加工しなおし、ピンのサイズを大きくなった穴のサイズに合わせて変更する方法である。 |
なお、長い期間使っていると発生する錆や細かい傷は、金型を磨いて対応する。
金型の磨き方
金型磨きの手順
適切なタイミングで金型を磨くことは金型寿命を延ばすために重要である。金型の研磨を全て金型製作者に対応してもらうと、その度に時間と費用が掛かってしまうので、ある程度は自社で対応できるようにすると良い。
金型磨きの手順は3工程に分かれている。
図1.金型磨きの手順
砥石→ペーパー→ダイヤモンドの順で磨き材を変えて磨く。粗い目のものから少しずつ、細かい目のものに変えていく。
表4.磨き上げる順番
砥石 | #180→240→320→400→600→800 |
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ペーパー | #800→1000→1200→1500→2000 |
ダイヤモンド仕上げ | #1800→2000→3000→4000→6000→8000 |
金型磨きのポイント
金型を磨く上でのポイントは下記のようなことが挙げられる。
- 磨くときはできるだけ軽い力で磨き、力を均等に入れて、磨きムラの無いようにする
- 磨きは隅から磨き、角部はだらさない
- 目詰まりを防ぐため、磨く回数は1面あたり10~15回程度にし、磨くたびに出る研磨屑はエアーで飛ばすか、研削液を用いて浮かび上がらせる
- 研削液を使う場合は、次工程に行く前にしっかりふき取る
- 磨き目を細かいものに変える度に磨く向きを変える(70度程度)
- 次工程に進む前にキズを確認し、取り除いてから次工程に進む
- 砥石がけはスティック砥石を用いると均一にかけやすい
- ペーパーがけは研磨仕上げ用のスティックに取り付けて行う
- ダイヤモンドコンバウンドは、鹿皮あるいはネルなどを使用して磨く
- 磨き材は砥粒、粒度のそろった上質なものを使用する
金型を磨く上で押さえておきたいポイントは、求められる品質、かけられる工数によってある程度変化する。特に磨き目の変え方は金型の材質によって適切なやり方が変わってくるので、専門家に相談しながらベストな方法を探っていくと良い。
技術情報提供:株式会社モリヨシ技研
情報掲載サイト:金型よろず支援ネット