プラスチック成形/射出成形の製造工程にて発生する成形不良の中で、異物・黒点は最も不良率の高いものの一つである。ここではその対策がなぜ必要か、確認方法、対策について解説する。
異物・黒点とその対策の重要性
異物とは、大きく3つに分類することができる。
- 透明部品の内部及び表面に存在する、母材と異なる物質
- 外観部品の表面近傍に存在する、母材と異なった色を有する物質
- 機構部品の表面近傍に存在する、母材と異なった色を有する物質
次に黒点は、多くは炭化物が原因となり発生するものである。
炭化する前には、黄色・褐色の酸化段階の物質も見られる場合がある。
異物・黒点は、成形不良の中でも、最も不良率の高い事象の1つと言われている。
また、発生原因も多岐に渡り、対策も非常に難易度が高いため、対策が重要となる。
確認の進め方
現象の詳細確認
まず以下3項目を軸に現象を確認します。
・発生率
具体的に何パーセント程度の発生率かを確認する。
・発生頻度の傾向
ランダムか、断続的か、もしくは特定の段階だけ集中的に発生するのか等により、原因が推察される場合もある。
・発見工程
自工程、次工程、最終工程、出荷検査、またはクレームとして発見された等、どの工程での発見かを確認する。
物質の分析
目視では70μm~100μm程度が限界と言われているので、まずは顕微鏡等で拡大して観察する。拡大することで、目視では見えないものが、見えてくる場合がある。
例えば、透明部品の中に小さく光る点が有る場合、目視では金属粉に見えても、顕微鏡で見ると、小さなボイドであるケースもある。金属粉とボイドの場合では、対策が全く異なるので、初期の段階でしっかり分析しておくことが必要となる。
物質の特定
異物特定方法は複数あるが、赤外分光分析(FT-IR)が用いられる場合が多くなる。赤外顕微鏡を使って異物を拡大し、赤外を当て分析する方法である。
赤外分光分析の結果としてよく出てくるものは、紙、炭化物、染料、顔料、繊維、母材とは異なるプラスチック、金属、シリカ(砂)、皮膚、垢、フケ、オイル、ゴム、毛髪等が挙げられる。
物質が特定できたら、発生場所の追跡を行う。
特定した物質別の対策
母材と異なる樹脂の場合
搬送系でペレットに削り取られたもの、または段取り時の残留物が原因と考えられる。確認場所としては、①材料搬送系、②可塑化ユニットの2か所となる。
①材料搬送系において、母材と異なる樹脂が残る理由
<段取り時に残留した前ペレットまたは樹脂粉が脱落し、新しいペレットと溶融して異物になるケース>
主に以下4か所に樹脂粉が付きやすい傾向がある。
表1 樹脂粉が付きやすい場所
隙間 |
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滞留しやすい箇所 |
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水分が付着している箇所 |
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静電気が発生している箇所 |
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<材料搬送系のホース・パッキン等が、ペレットとの衝突で削れて脱落し、異物になるケース>
ペレット搬送中にホース内面が削り取られ、脱落したものが可塑化ユニットに入り、異物となります。
対策としては、搬送経路を耐摩耗性に変更します。または、搬送経路途中で樹脂粉の捕捉を行います。
②可塑化ユニットにおいて、母材と異なる樹脂が残る理由
溶融樹脂はスクリュー外面やシリンダー内面に残りやすく、完全にパージができないと異物となる。
対策としては適切にパージを行う。または、可塑化ユニットの洗浄を行う。
炭化物の場合
可塑化ユニット内で滞留した材料が炭化し、その炭化物が成形中に剥がれ落ち、溶融樹脂に混ざり、異物になる。
炭化する前には、黄色・褐色の酸化段階の物質も見られる場合がある。
この場合は、可塑化ユニットの洗浄が必要になる。
金属の場合
金属が出てきた場合には、以下3点が想定される。
①材料搬送経路SUS部品内部からの金属粉
材料搬送時に、ホース内面にペレットが衝突し、内面が削り落とされる。
場所を特定し、磨くまたは交換する等の対策が必要となる。
光沢の違いや表面の傷から金属脱落場所を確定し、その部分のパイプを交換する。
② 成形機本体・ホッパー・ローダー等の鋳物部からの金属粉
隙間、段差部、角部、傷部等、滞留しやすい箇所について、触診、目視、ファイバースコープ等を用いて、場所を特定する。
③ 再生材中の金属粉(粉砕機内部からの金属粉等)
粉砕機の場合は、ファイバースコープや触診で内部を確認し、どこから出ているか確認し処置する。
改善しない場合は、搬送経路内で金属粉を捕捉する。
発生場所別の対策
ペレットから異物が出て来た場合
ペレット内に元々異物が入っていたのか、それとも工程内で発生した異物なのかを判別することが重要となる。
工程内で発生した可能性が低いのであれば、ペレットを自動検査もしくは目視検査を行う。
ペレット内において、成形品で発生している同じ異物が入っていると判明した場合には、材料メーカーとの調整が必要となる。
金型から異物が出て来た場合
金型からは、潤滑油等のオイル、金属粉、樹脂の添加剤が出て来る場合がある。
摺動部のグリスが成形中に浸み出し成形品表面に付着する、または、摺動部のカジリで金属粉が金型表面に付着する等の事象が起きる。
この場合は、スライド部のオイルレス化が重要になる。
添加剤は、金型のエアベント部に低分子の樹脂添加剤が堆積する。
型開き時に成形品表面やキャビティの裏に付着し、異物として出て来るので、金型の定期的なメンテナンスが必要になる。
作業環境が起因で異物が出て来た場合
現場では主に以下のような環境ゴミが挙げられます。
表2 主な環境ごみ
材料袋 | ペレット投入時のゴミ |
---|---|
ローダー | 排気エア中の粉塵 |
周辺機器類 | オイルミスト等、粉砕機粉塵 |
乾燥機・ホッパー | 排気エア中の粉塵 |
成形機本体 | オイルミスト等 |
通い箱 | ポリ粉塵拡散 |
作業者 | 毛髪、衣類繊維、靴裏の土等 |
外部 | 窓から入る砂埃や花粉等 |
清潔な職場環境を保ち、発生源を徹底除去することが対策となる。