プラスチック射出成形金型部品やボルト、ピン等の機械部品には、引張応力や曲げ応力、せん断応力、ねじり、衝撃応力、疲労など様々な外力が作用します。金型が設計思想の通りにその性能を発揮して、所望の成形品を生産するためには、これらの機械部品は割れたり、破壊したりしないで安心して使える状態に最初から設計をしておかねばなりません。
金型部品の設計では工業力学と材料力学を使って強度計算をするのが一般的です。しかし、金型部品の一部にはピンを通すための穴が開いていたり、段差部分にコーナー部があったりします。経験的に言えることは、これらの穴の縁やコーナー部分に大きな力が作用すると、そこから亀裂(クラック)が発生していることを観察することができます。
機械部品では、穴やコーナー部は破壊の起点になりやすく、そこを補強しておいかないと なりません。
では、なぜ破壊が穴の縁やコーナー部分から始まるのでしょうか?
それは、材料力学によって説明をすることができます。
機械部材(板)に貫通穴が開いている場合、この機械部材を両側から引っ張ったと仮定すると、断面に生ずる応力は次の式で表現されます。
- σx
- =σn(2+a2/y2+3a4/y4)/2
- a
- :穴の半径(mm)
- σn
- :穴から十分に離れた部分の応力。公称応力(Mpa ,kgf/mm2)
ここで、穴の縁における最大引張応力をσmaxとすれば、
- α
- =σmax/σn
- =3
となります。
αのことを、形状係数(form factor)または応力集中係数(stress concentration factor)と呼びます。
つまり、穴の縁には部材に作用している公称応力の3倍の応力が作用するということになるので、穴の縁から破壊が始まるのです。
同様に、コーナー部でも応力集中が発生しますので、コーナーから破壊が始まります。
機械設計においては、このような応力集中を回避するデザインをしなければなりません。