ポリ乳酸樹脂は、化石系素材を一切使用せず、植物系素材だけで生産が可能で、しかも廃棄後は天然の微生物の働きによって水と二酸化炭素だけに生分解させることができる理想の環境対応プラスチックです。しかし、以下のような疑問点が存在します。これらについては適切な情報がなかなか入手困難で、誤解を招くケースも多くあったようです。現時点で多くの関係者に支持されている説を紹介します。
Q1.ポリ乳酸樹脂はどうして素晴らしい素材なのに普及していないのか?
A1.原因はいくつか考えられますが、一番の理由は原材料のコストがポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)やスチレン系樹脂(PS、ABSなど)と比較してまだ高いためだと考えられます。生産量がまだ少ないため原材料価格が高いのは仕方がありませんでした。しかし、石油価格の高騰、ポリ乳酸樹脂の生産量の急速な増加により、コスト差がだんだん小さくなってきています。その結果、原材料コストの問題は小さくなる方向で推移してきています。
Q2.ポリ乳酸樹脂は、燃焼処理はできないのか?
A2.化石系プラスチックと同様に燃焼処理も可能です。その際に発生する二酸化炭素と熱量は、化石系プラスチックに比較して半分程度であり、燃焼処理させても地球温暖化には優位であることが確認されています。
Q3.ポリ乳酸樹脂は、ランナー等を再生材として再利用はできないのか?
A3.再利用できます。
Q4.生分解はいったいどのぐらいの期間が必要なのか?
A4.生分解が始まるには、微生物の量、温度、湿度、PHなどの環境が整う必要があります。日常の一般的な使用環境(例えば文具や容器など)では、手でさわっただけとか水を常温で入れっぱなしにしていたとしても生分解は起こりません。土やコンポストなどの中で条件が整うと生分解が開始します。土の中ですと、分解がはじまるには1ヶ月程度必要です、コンポストで60℃近くの温度になっていますと3日ぐらいで分解が始まります。
フィルム状の成形品でコンポストに投入した場合では2週間ぐらいで完全に分解されます。肉厚1mm程度の成形品をそのままの形で土へ埋めた場合では4~5年ぐらい時間がかかります。
Q5.とうもろこしを原材料に使用すると食料問題に発展する危険性はありませんか?
A5.現在ポリ乳酸の製造に使用されているとうもろこしは、牛馬等の飼料(えさ)として生産されている雑穀が使われています。人間が食べるスイートコーンではありません。世界で生産されているとうもろこしの生産量の99%程度は飼料用であり、人間の食料として直接に消費されるのは1%程度と推定されます。現在のポリ乳酸の生産量は、石油系を含めた世界のプラスチック生産量の0.1%程度で、将来仮に10%まで増大したとしても飼料用作物の生産能力から考えれば人間の食料問題に発展する可能性はほとんど考えられないと思われます。
Q6.ポリ乳酸樹脂は食べられますか?
A6.ポリ乳酸樹脂は、食べ物ではありません。しかし、誤飲してしまったとしても無毒です。食品容器類に使用する場合には、業界の安全基準や法令に準拠したグレードを採用する必要があります。
Q7.ポリ乳酸樹脂に着色は可能ですか?
A7.マスターバッチ等で着色は可能です。生分解性の着色材料も開発されています。
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- 参考文献:各種新聞報道資料、材料カタログ