金型を起工する場合には、どのぐらい故障しにくいような構造にすれば良いのかを、検討する必要があります。
具体的には、コアピンの突き当て面や食い切り面の摩耗やコアピンの破損、ガスによる腐食などによる金型の故障を、どのように保証しようかということです。
これらの保証期間を長くするためには、高級な鋼材を使用したり、丁寧な熱処理、特殊コーティング被覆、ステンレス鋼の採用などの手段が考えられますが、これらの手段にはコストがかかります。
つまり、金型の信頼度(金型の故障のしにくさ)Rを向上させるためには、金型製作コストが高くなる傾向にあります。(【図】参照、A曲線)
一方、金型の信頼度Rが低い場合には、摩耗した部品の交換やメンテナンスなどのコストが高くなる傾向があります。(【図】参照、B曲線)
結論として、トータルコスト曲線(A+B)が最小になる信頼度R1が最適な金型の信頼度になります。金型を起工する場合には、金型の寿命を推定し、その寿命の間に何回ぐらいのメンテナンスを考えているのかを想定し、メンテナンスにかかる費用と保証期間を長くするための費用を見積もって、金型の製作コストとメンテナンスコストを加算したトータルコストを考えるようにすると良いでしょう。
プラスチック射出成形金型は、その用途によって、1,000ショット程度で生産終了してしまうものや、メンテナンスを加えながら3,000,000ショットも使用するものがあります。どのぐらいの信頼度で金型を起工するのかを、金型発注企業は十分に検討することが、投資効率を高めるためには大切です。