材料の選定で、迷わない!基本的な材料や表面処理の特性・選び方をひとまとめ
- 工業材料とは?/金属材料の基本
- よく使われる金属材料
- 熱処理とは?/表面処理とは?
熱処理とは?
固体の鉄鋼製品が、全体又は部分的に熱サイクルにさらされ、その性質及び、又は組織に変化をきたすような一連の操作(JIS G 0201 鉄鋼用語)
鉄鋼の熱処理
<豆知識>
純鉄は、910℃で諸性質が突然変化する。この温度をA3点と呼ぶ。 A3点以下ではα鉄、 A3点以上ではγ鉄と称し、結晶系が変化する。γ鉄は1390℃でδ鉄に変化し、遂には1543℃で溶解する。
鉄が他の元素を固溶した状態をフェライトという。Fe-C系では、フェライトは炭素を最大0.035%固溶する。 γ鉄をオーステナイトといい、炭素を比較的多く固溶する。1130℃では1.98%を固溶する。この場合、炭素原子はγ鉄の結晶格子中に侵入型に合金している。
オーステナイトを徐冷すると、723℃でγ鉄がα鉄とFe3に変化(共析変態)し、パーライトを生ずる。
名称 | 対象材質 | 特徴 |
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焼きなまし(焼鈍) | - | 金属を適当な温度に加熱し、その温度を適当時間保持した後、徐冷する処理。単に焼きなましという場合は、完全焼きなましを意味することが多い 完全焼きなまし: 冷間加工または焼入れなどの影響を完全になくすため、均一オーステナイトの領域まで加熱し、これを徐冷すること |
焼きならし(焼準) | - | 常温加工や急冷などによって生じた変形や組織の粗大を除いて正常な状態に戻すため、 A3点以上に加熱し、一様なオーステナイトにした後に、静かに空中放冷すること |
焼入れ | - | γ状態の鋼を急冷すると、Cの拡散を伴わないので、パーライト変態を起こさず、常温近くで格子変態を生じ、マルテンサイト組織という硬さの高い組織を得る。この一連の流れ。急激な焼入れは、焼き割れを生じるため注意が必要。 ※焼入れと焼戻しは、セットで実施する |
焼戻し | - | 焼入れのみではもろく、一般用途に適さない。よって、焼入れした鋼を低い温度(220~650℃)で再加熱し、必要な粘りを取り戻すことを、焼戻しという。 ※焼入れと焼戻しは、セットで実施する |
高周波焼入れ | 中炭素鋼 C 0.3~0.5% | 高周波誘導電流によって、鋼材の表面を急熱し続いて急冷して硬化させる 方法 |
浸炭焼入れ | 低炭素鋼 C<0.3% | 低炭素鋼を浸炭材中で加熱し、鋼表面から炭素を浸透させてその付近のC濃度を高める方法。 表面は硬化するが、内部は低炭素のままなので硬化せず、粘り強さを保持で きる |
窒化焼入れ | 窒化鋼 SACM645など | 鋼表面に窒素を浸透させることによって、表面を硬化する方法 |
タフトライド® (塩浴軟窒化) | 鉄鋼 | 他の性質改善を考えて、窒化することを軟窒化という。炭素鋼や鋳鉄にも適 用でき、耐摩耗性、疲れ強さ向上の効果がある。 タフトライド®は、デュルフェリット社の登録商標です |
表面処理とは?
材料表面の耐食性や見栄えなどの性質を高めるために、めっきや塗装をすること
大分類 | 名称 | 対象材質 | 特徴 |
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化学処理 (化学皮膜) |
三価クロメート処理 | 鉄鋼 | 亜鉛メッキの後に、クロム酸溶液に数秒間浸漬させるとクロメート皮膜が形成される。極めて薄い皮膜だが、亜鉛メッキを保護し、外気に触れたときに生じる白色腐食生成物の発生を防止する。RoHS指定の有害物質、六価クロムを含有しない |
四三酸化鉄皮膜 (黒染め) |
鉄鋼のボルト、ナット、計測器 | NaOH水溶液中に鉄を浸漬、煮沸して、その表面にFe3O4の黒色薄膜を生成させる。黒色が美しく、厚さも1~2μm程度で多孔質、電気絶縁性はない。防さびの厳しい部分には適用しない方がよい | |
無電解メッキ | 無電解ニッケルメッキ | 鉄鋼、ステンレス、銅、アルミ合金、ガラス、プラスチック | 電気を用いず、電気の役目をする還元剤がメッキ液に含まれている。前処理が適切であれば、あらゆるものにめっきが可能。膜厚は均一だが、メッキ速度は遅い |
陽極酸化処理 | アルマイト | アルミニウムやチタニウムなどの軽金属 | 電解液中で材質を陽極にして電解すると、陽極上に比較的厚い酸化被膜が生成する。耐摩耗性、耐食性、電気絶縁性、耐熱性の特長を持つ。また、材質や電解液によって、皮膜の色が変わるので、着色も可能 |
表面処理の外観色
三価クロメート | 無電解ニッケルメッキ | 四三酸化鉄皮膜 | アルマイト(白) | アルマイト(黒) |
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参考文献
- 図説機械用語事典 淺岡 廣一、三上 勝、外山 圭佑著 実教出版
- Wikipedia
- デジタル大辞泉
- ミスミ FA用メカニカル標準部品カタログ2013