一般に、金属エッチングというと、合金金属などの金相学的組織を見るために、樹脂等で固定し、研磨した金属面の化学的あるいは電気化学的腐食(エッチング)を連想しますが、これは、あくまでも観察や測定のためのエッチング処理であります。
また、表面処理における金属エッチングは、熱処理や機械加工によって生じたスケールや変質層を除去する各種酸類による酸洗いや、酸またはアルカリによる建築材料や銘板などの腐食処理(エッチング処理によるエンボス板)など、金属表面を滑らかで光沢面にする電解研磨や化学研磨などのエッチングが、昔から行われてきましたが、どちらかといえば、主たる表面処理の前処理的なエッチング処理であります。
ここで取り上げるエッチング処理は、例えば、銅張りプラスチック基板の指定部分だけの銅箔を溶解して電気回路を形成する銅エッチングであるとか、銅合金やステンレス鋼などを素材として、その上に文字や模様を彫刻したように腐食(食刻)によって掘り下げ、それらが半永久的に消えないようにしたりする印刷製版やネームプレート、金属の薄板に規則正しい模様を穴あけしたりするエッチングを取り上げます。つまり、金属をエッチングによって切断したり、削ったりして、ある機能をもったパターンを成形することであります。これは、あたかも機械で切削したりすることと同じことから「chemical milling(ケミカルミーリング)」などともいわれています。 日本語ではエッチングを「腐食」といっていますが、成書によれば、「エッチングとは、与えられたパターンに一致して対象物から材料を化学的に除去することである。」と定義されています。エッチングには、「ディープエッチング(deep etching)」と「表面エッチング(superficial etching)」があります。前者は、輪郭形成や孔あけなどの形成作用をもっています。これに対して後者は、除去される材料の量がきわめて僅かであり、エッチグ剤の面あらし作用によって表面上に対照効果が現出されますので、ネームプレートなどに利用されています。本稿では、前者の、deep etching を取り上げます。 エッチング処理には、化学エッチングと電解エッチングがあります。化学エッチングは、成形するパターンをエッチング液に耐食性のレジストで金属上に描き、金属の露出している部分をエッチングして除去する方法です。電解エッチングは、目的の形状に作られた電極を陰極とし、被加工物を陽極として、その間を電解液で満たし直流電解を行い、電気化学的に素材を溶解除去する方法です。 |