ひけ(sink mark)は、成形品の表面が収縮によって、ほんの少し凹んだりする現象です。外観表面を有する成形品では、品質不良になるケースがあります。ひけが成形品の表面に現れないで、成形品の内部に気泡(空洞)が発生する場合もあります。これはボイド(void)と呼びます。ひけもボイドも溶けたプラスチック樹脂が冷却固化する過程で、異常な収縮を起こすために発生する現象です。
これらの不良を防止するためには、根本的に異常な収縮を抑制する手段を講ずることで解決が図られます。
ひけを解決するためには、下記のような手段が考えられます。
(1)金型に関連する対策
- キャビティ表面温度を若干低くする。
- ゲートの大きさを広くする。
- ランナーサイズを大きくする。
- スプルーを太くする。
- 金型の冷却回路を再検討し、冷却効率を高める。
- 冷えにくい部分の冷却構造を、冷えやすい構造に改造する。
(例:バッフルプレート構造、冷却パイプ構造、ヒートパイプ、非鉄金属入れ子) - ゲート本数を増やす。
- ゲート位置を厚肉部分へ変更する。
(2)射出成形条件に関する対策
- 保圧時間を長くする。
- 保圧を高めに設定する。
- 射出速度を速めに設定する。
- ノズル温度を低めにする。
- 計量値を増やしてみる。
- クッション量を増やしてみる。
- 射出成形機を変更してみる。
- 射出ユニットの逆流防止リングの交換を行う。
(3)成形品デザインに関する対策
- 成形品の厚肉部分を取り除く。
(例:肉盗み形状、別部品化) - 非晶性樹脂を採用する。
ひけを防止するために保圧を高くしたり、保圧時間を長くすることにより、成形品のパーティング面や分割面にばりが発生することがあります。ひけとばりは相互に逆行する関係にありますので、金型全体のバランスの取れた対策を採用するようにします。