成形機とセットで利用する金型は、成形機と同様に保守管理を適切に行う必要がある。扱いを誤ると、成形品のムラに繋がったり、金型寿命が縮まる原因になる。ここでは、保守管理のポイントとなる防錆・油取とりと保管時のポイントを解説する。
防錆・油取り
錆は金型の天敵である。錆が発生してしまうと錆取りが必要となり、日頃の手入れよりもずっと手間がかかってしまう。錆を防ぐためには湿気を防ぐことを心がけよう。
表1 化粧品に用いられる無機粉体
1.利用が終わった金型は、防錆の前処理を行う。まず、防錆油を塗布する箇所を洗浄する。ゴミや埃などが残っていると防錆効果が十分に発揮されない為である。 |
防錆油の塗布する箇所を洗浄 |
2.次にエアなどで充分に乾燥させる。水分が残っていることも錆の原因になる。型冷却用の配管はエアパージして水気を取る |
エアなどでの十分な乾燥 |
3.乾燥させたら防錆油を塗布する。塗布の方法は、刷毛塗り、スプレーといった方法がある。金型の形状、作業スペースに応じて適切な方法を取る。なお、防錆油には多くの種類があり、保管期間や保管場所、使用目的によって適した防錆油が変わる。適切な防錆油がわからない場合は、メーカーの担当者に相談したうえで型番を決める。 |
乾燥後の防錆油の塗布 |
防錆油を塗布して保管し、再度金型を利用する場合は、利用前に十分な油取りが必要となる。油取りを怠ると、キャビティやコアなどあらゆる部分から油が染み出し、成形品不良に繋がる。特に透明度が重要となる成形品の場合、相当なショット数が不良品となり、時間と材料の損失がより大きくなる。
油取りに使用するのは、金型洗浄剤、ミネラルスピリットやシンナーといった有機溶剤である。手が入らない箇所については、流し込んでエアでふき取る。また、加熱時に腐食性のガスが発生する塩化ビニル樹脂を成形する場合は、ガスにより、金型はすぐに錆びついてしまう。したがって、塩化ビニル樹脂を成形する場合、より頻繁に金型の洗浄やメンテナンスが必要となる。
金型の防錆は防錆油を塗布して、保管し、使用時に油をふき取るという流れが一般的である。他に行われる防錆法としては、以下の方法がある。
- メッキなどの表面処理を利用する
- ふき取り不要の防錆剤を利用する
- 防錆剤が含まれているフィルムを利用する
金型にメッキを施すと、防錆効果が上がるだけではなく、耐摩耗性も向上する。コストがかかる反面、金型を長持ちさせるのに有用である。金型に施すメッキとしては、硬質クロムメッキなどがある。また、金型を磨く際にイエプコ処理を事前に行い、磨き時間を短縮させる方法もある。
ふき取りが不要な防錆剤を利用する場合、気化性の防錆剤を金型にスプレーして保管し、ふき取ることなく捨てショットを打てばそのまま成形できる。コストはかかるが、削減できる工数等を考慮し利用するのも一つの手となる。
また、気化性の防錆剤が含浸されているフィルムを利用する方法もある。フィルムが箱型になっているものの場合、フィルムに包まれているところ全てが防錆されるので、防錆油などをどうしても塗布できない内部まで防錆効果がある。フィルムで覆うだけなので、手軽で効果の高い防錆法である。
金型の保管と記録
金型の保管場所は湿度の低く、換気の良いところを選択しよう。湿度は70%以下に保つことが望ましく、 70%を超えると発錆が急速に進む。型の置き場所は、型替え作業をスムーズに行えるよう、金型を利用する頻度などに応じて配置する。
最近では金型保管用の整理棚など便利なものが市販されており、金型の整理に利用すると良い。少し値は張るが、スライド式の棚を利用するとスペースを有効活用できる。現状の型の数、型替え頻度、配置スペースなどに応じて検討する。
金型を保管する場合、防錆、防塵のためビニール袋に入れる。袋で密閉できるとより良い。スプール部などの開口部にはテープを貼り密閉しておこう。
射出成型は従来の少品種大量生産から、多品種少量生産へとシフトしており、金型の数が増えてきている。金型が増えればそれだけ型替えの機会も増え、型替えごとの時間のロスが生産時間全体に与える影響が大きくなる。型がどんどん増加している今日では、金型の適切な管理、運用なしでは効率の良い生産はできない。金型の適切な管理には、金型管理台帳と金型管理ラベルをセットで活用することが有効である。
金型管理台帳 | 金型管理台帳には、製作番号、金型名、機種、取り数、重量、成形品単位重量、購入(製作)年月日、製作会社名、購入価格、図面番号、受注先、金型の写真、成形品の写真、修理履歴などを記入する。管理台帳を見れば、どういう金型なのかすぐにわかるようにしておこう。 |
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金型管理ラベル | 金型管理ラベルは、主に現物を特定するのに利用する。金型が増えて、現物と管理台帳を紐づけるものがないと、利用したい金型がどれかわからないという事態が起こってしまう。金型に管理ラベルを取り付ける場合、熱にさらされるので一般的なラベルでは貼り付けできない。金型で管理ラベルを活用するには、金型に直接ラベルを貼らずに、金型を保管する棚に貼ったり、熱に耐えうる耐熱ラベルを利用する方法がある。なお、保管する棚にラベルを貼る場合は、決まった場所に必ず戻すというルール決めが必要となる。 |
また、破損している金型には破損している旨と、破損箇所を記載した札等をつけておくと、管理しやすくなる。管理台帳と管理ラベルをうまく活用すれば、作業開始時のロスを大幅に削減可能である。
技術情報提供:株式会社モリヨシ技研
情報掲載サイト:金型よろず支援ネット