金型のキャビティ、コアやモールドベースの一部分が、打撃や落下、磨耗等により凹んでしまったり、欠けてしまった場合の暫定補修の方法の一つとして溶接があります。
溶接は、超大型の金型などの特殊な構造を除いては、通常の金型製造方法では使用されず、修理にのみ利用される工作法です。
緊急修理をしなければならない場合には有益な加工法ですが、その採用にあたっては下記のような配慮が必要になります。
- (1)
- 溶接した部分には熱ひずみが発生し、寸法が大きく(0.02〜0.5mm程度)変寸するので注意が必要です。
- (2)
- 溶接した部分の硬度は再加熱によって低下しますので、焼き入れ鋼では硬度が著しく低下してしまうことを了解してください。
- (3)
- 溶接部と母材との境界には熱による変質層が発生しますので、成形品の表面にラインが転写されてしまう確率が極めて高いことを了解する必要があります。
- (4)
- 溶接部は、成形材料から発生するガスや水分によって腐食されやすい場合があります。
- (5)
- 溶接部には残留応力が発生しますので、時効による変形が後で発生する場合があります。
- (6)
- 溶接部には気泡、炭化物の巻き込みなどの欠陥が内在する場合があります。
- (7)
- 溶接をする前には、溶接部の洗浄、錆び取りなどが必要な場合があります。
- (8)
- 溶接を開始する前に、余熱をする場合があります。
- (9)
- 溶接する場合に、炭酸ガスやアルゴンガスによって、酸素を遮断するシールド溶接を行うことが推奨されます。
- (10)
- 溶接電流の調整、溶接棒の選定、溶接棒の先端形状の調整など、溶接の技量によって加工品質は大きく左右されます。