射出成形用部品
- 液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)は、耐熱性の良好な結晶性樹脂です。 ガラス繊維を30〜40%程度強化することで、荷重たわみ温度は270〜310℃程度まで上昇させることができるので、表面実装用対応用の精密電子部品に採用されています。 電気特性や振動吸収性能も良好です。自己消火性もあります。 溶融粘度は低く、流動性が良好なので、射出成形はしやすい樹脂です。その割には、冷却固化速度が速いので、ばりは発生しにくい長所を持っています。 反面、ウエルド部の接合強度が低いために成形品の形状によっては、工夫が必要になる場合があります。 また、流動方向と流動直角方向の成形収縮率に差がありあますので、金型設計にはノウハウの活用が必要になります。 金型の表面温度は、100〜150℃程度まで上げなければなりませんので、油による温度調節や電気ヒーターによる温度調節が必要になります。 ポリフェニレンサルファイドと並んで、電子部品用のスーパーエンプラとして各方面電子関連分野で採用が進んでいます。タグ:
- ポリプロピレンは、軽量で耐熱性の良好な結晶性樹脂です。半透明なグレードもあります。 ポリプロピレンは、特にヒンジ部の繰り返し疲労特性が良好で、他の樹脂に比べて優れた特徴を持っています。また、食品関係に使用しても安全性が良好なので、様々な容器類に利用されています。 ガラス繊維による強化も可能で、自動車部品にはこのタイプが多用されています。 溶融時の粘度が低いので、金型を製作する場合には、入れ子の分割面のクリアランスが大きすぎると、ばりが出やすいので注意が必要です。 また結晶性ですから、金型の温度管理状態によって成形収縮率も変動しやすいので、留意をします。 代表的な使用例としては、次のようなものがあります。タグ:
- ポリスチレンは、耐薬品性が良好な透明樹脂です。射出成形加工ができる樹脂として古くから多用されてきました。 家電の普及に従って、様々な分野で使用されている身近な存在でもあります。 粒状のゴム成分を分散させることによって、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が開発されたことで、大型家電の筐体に採用されるようになってきています。 また、食品容器関連ではいろいろなジャンルで実用化されています。透明なので、容器には適しています。 主な用途は、以下のようなものがあります。タグ:
- 最近商品化された透明なプラスチックです。非晶性樹脂であって、軽量、耐薬品性も良好です。 光学的特性では複屈折率が低く、アクリル樹脂と同水準の性能を有しています。また、吸水率も低く、耐熱性があるのでスチーム滅菌もできますから、薬品関連にも使いやすい特徴を持っています。 射出成形性にも優れており、光学分野や医療分野で実用化が進んでいます。 金型の転写性能も優秀です。 これからの新しい透明樹脂の一つとして注目されています。 これまでに開発された代表的な実用用途には、次のようなものがあります。タグ:
- ABS樹脂は、非晶性樹脂であって、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンからなる共重合体です。 汎用プラスチックの中では、安定した強さと美しい光沢が得られ、家電製品を中心に幅広く使用されています。 成形品の表面にめっきを施したり、スパッタリングも可能です。 ただし、屋外での耐候性が優秀ではない点が指摘される場合もあります。 ポリカーボネイトやPBT、ポリアミド等と、ポリマーアロイを構成させて使用する例も増えています。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- アクリル樹脂(メタクリル酸メチルエステル、PMMA)は、透明な非晶性の樹脂で、レンズや照明関係に古くから利用されています。 最近では、素材に他の化学成分を加えて改質が行われ、性能が向上されているグレードも各種開発されています。 アクリル樹脂の最大の特長は、光線透過率が優れている点です。樹脂の中では最も優れた性能を有しています。 また、表面硬度も高いので傷に対して抵抗力があります。コーティングにより硬度はさらに改良ができます。 耐候性も比較的良好な部類に属します。 主要な用途には、以下のような事例があります。タグ:
- ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ペットボトルに使用されている透明な飽和ポリエステル樹脂です。 耐薬品性、耐熱性が良好であるので、食品容器類を中心に利用されています。 また疲労強度も良好で、電気特性も優れています。 ガスバリア性は極めて優秀です。 しかし、フェノールやクレゾールには侵食されます。 射出成形やブロー成形で使用されています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)は、荷重たわみ温度が260℃近辺まで耐えられるスーパーエンプラです。 架橋型、半架橋型、直鎖型の種類があります。 はんだの融点よりも荷重たわみ温度が高いので、リフローはんだ用の表面実装対応の電子部品に多用されています。 流動性が良いために、射出成形ではバリが発生しやすい特徴があります。 金型温度は130〜150℃まで上げる必要がありますので、金型は油での温度調節やカートリッジヒータによる保温が必要です。 材料の価格は高価でしたが、量産効果によって最近ではリーズナブルな価格帯へ落ち着いてきています。 主要な用途は、次の通りです。タグ:
- ポリカーボネイトは、透明で、強度が高い耐熱樹脂として、広い分野で応用が図られています。 最近では、ABS樹脂等とアロイにしたタイプも、工業用として多用されています。 非晶性であって、光線透過率も良好でありレンズやカバー類には好適な樹脂の一つです。強度的にも優秀で、特に耐衝撃性はプラスチックの中でも上位に位置しています。 ただし、有機溶剤には侵されるので、グリス類や溶剤が塗布されるような場合には注意が必要です。 射出成形では、流動性が悪いので、充填圧力は高めに設定しなければなりません。また金型温度も80℃程度まで上げる必要があります。 具体的な使用例としては、下記のような用途があります。タグ:
- POM樹脂(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)は、破壊強さ等の機械的特性や耐磨耗特性などが優れたエンジニアリングプラスチックです。 POMには、単独重合体(ホモポリマー)と共重合体(コポリマー)があります。 ホモポリマーとコポリマーでは、強度、耐熱性、成形条件などに差があります。 POM樹脂の最大の特長の一つとして、自己潤滑性があります。歯車や軸受けなど、常時、摩擦を受ける部品においては、重宝される機能です。 結晶化度も高いので、強度や耐熱性も良好な特性を示しています。 射出成形では、シリンダー内に長時間滞留させてしまうと熱分解を起こしますので、注意が必要です。 主要な用途は、次のようなものがあります。タグ:
- PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)は、耐熱性が良好で、機械強度の高いバランスのとれた樹脂です。 結晶性であり、有機溶剤や油類にも耐える特徴を有しています。 電気抵抗や誘電率も変化しにくく、電気電子用途にも多用されています。 ただし、加水分解を起こすために、高温の湯中での連続使用では注意が必要です。 ガラス繊維の強化によって、強度は改善されます。 主な用途は次のとおりです。タグ:
- ポリアミドは、ナイロン(商標名)として著名ですが、PA6、PA66、PA46、芳香族ポリアミドなどの種類があります。 特徴としては、摩擦磨耗特性が優れているので、騒音が発生しにくく、安定した摺動が得られます。 また有機溶剤や油に対する性能も優れています。 一方、吸水性や吸湿性が大きいので、成形品の寸法変化が見られます。 ガラス繊維による強化で、耐熱性や強度が改善されます。 主要な使用例は、下記のような事例があります。タグ:
- 射出成形加工では、溶けたプラスチック(流体)がスプルーやランナーを通過して、キャビティの中に充填されます。 この現象を模式的に考えまてみますと、粘り気のある流体が、管の中を流れていくということに表現されます。 粘り気のある流体が、ある断面積の管の中を流れていく場合には、「流量の式」という基本的な状態を表現する計算式があります。 【流量の式】 Q=av Q:流量(m3/sec) a:流路の断面積(m2) v:流体の流速(m/sec) 一定時間に管の中を流れる流体の体積Qは、流路(管)の断面積と流体の流速をかけることにより求めることができます。 流量を増加させるためには、流路の断面積aを大きくするか、流体の流速を早くすることが必要であることが式より分かります。 また、流量が一定である場合には、下記の式が成り立ちます。タグ:
- 射出成形金型では、溶けている液体のプラスチックを金型内部へ注入させて、冷やして固めて、取り出します。 溶けているプラスチックを注入するためには、圧力を加えなければなりません。 どのぐらいの圧力が必要になるのかは、流体力学の計算によって、あらかた予測することが可能です。 実際には、溶けたプラスチックは、粘性(粘りけ)があって、しかも時間と伴に粘性が変化していきますので(冷たくなると粘りけが増して流れにくくなる)、流体力学の計算はかなり難しい式になります。 この回は、一般的な流体の状態を考える上での最も基本となる「ベルヌーイの定理」について解説します。 ベルヌーイの定理とは、流体におけるエネルギー保存の法則を表した式です。 【ベルヌーイの定理】 v2/2g+p/γ+h=Hタグ:
- 今回は、射出成形金型が、成形機に取り付けられた後で、可動側金型が開閉する際に必要な力について考えてみます。(【図1】参照) 物体を移動させるためには、力が必要です。力は、有名なニュートンの運動の法則によって計算をすることができます。 【ニュートンの運動の法則】タグ:
- 射出成形金型が、成形機に取り付けられた後で、可動側金型が開閉する際の運動エネルギーについて考えてみます。(【図1】参照) 物体が、ある速度で移動するときには、運動エネルギーが必要になります。運動エネルギーの量が大きくなると、金型を停止させるためには、同等以上のエネルギーに耐えられるブレーキをかけなければなりません。また、運動エネルギーが十分に低下させられた状態で型締めしないと、金型が痛んだり破壊したりする危険が考えられます。 運動エネルギーの計算式は下記のとおりです。タグ:
- 断熱板は、射出成形金型の温度を安定化させたり、保温のための省エネルギーを実現するために重要な部品です。エンプラやスーパーエンプラの射出成形では必須の部品として利用されております。 ミスミでは、断熱板を商品ラインナップとして取り扱っておりますが、その用途によって選定をして頂いております。 断熱板の使用方法は、一般にタグ:
- 気泡(bubble、void)は、成形品の内部に空気の泡が発生する現象です。レンズやプリズムのような透明な成形品では、外観不良や光学特性不良になってしまいます。機械部材では、強度の低下や破壊の原因になったりします。 気泡には、発生原因別に2つの種類に大別されます。 1つ目は、溶融プラスチックの中に空気が混ざってしまったことに起因する気泡です。これは、(bubble)に相当します。 もう1つは、成形品が収縮する際に発生する真空ボイド(void)です。これは成形品の肉厚が厚い部分に十分な保圧が作用しなかった場合に、ひけが発生するのと同様に、異常収縮によって引き起こされる現象です。 これらの対策としては、下記が考えられます。