ここに掲載したものはあくまでも強度の求め方の一例です。実際には、穴間ピッチ精度、穴の垂直度、面粗度、真円度、プレートの材質、平行度、焼入れの有無、プレス機械の精度、製品の生産数量、工具の摩耗などさまざまな条件を考慮する必要があります。よって強度計算の値は目安としてご利用ください。(保証値ではありません)
ボルトの強度
1) ボルトが引張荷重を受ける場合
- Pt
- =σt×As ……(1)
- =πd2σt/4 … (2)
- Pt
- :軸方向の引張荷重[N]
- σb
- :ボルトの降伏応力[N/mm2]
- σt
- :ボルトの許容応力[N/mm2]
(σt=σb/安全率α) - As
- :ボルトの有効断面積[mm2]
As=πd2/4 - d
- :ボルトの有効径(谷径)[mm]
引張強さを基準としたUnwinの安全率α
材料 | 静荷重 | 繰返し荷重 | 衝撃荷重 | |
---|---|---|---|---|
片振り | 両振り | |||
鋼 | 3 | 5 | 8 | 12 |
鋳鉄 | 4 | 6 | 10 | 15 |
銅、柔らかい金属 | 5 | 6 | 9 | 15 |
- 基準強さ
- :延性材料の時は降伏応力
- :脆性材料の時は破壊応力
(例)1本の六角穴付きボルトでPt=1960N{200kgf}の引張荷重を繰返し(片振り)受けるのに適正なサイズを求めます。(六角穴付きボルトは材質:SCM435、38~43HRC、強度区分12.9とします。)
(1)式より
- As
- =Pt/σt
- =1960/219.6
- =8.9[mm2]
∴これより大きい値の有効断面積を以下の表より求め14.2[mm2]のM5を選定するとよいでしょう。
なお、疲労強度を考慮すれば表の強度区分12.9から許容荷重2087N{213kgf}のM6を選定します。
強度区分12.9の降伏応力はσb=1098[N/mm2]{112[kgf/mm2]}
許容応力σt=σb/安全率(上表から安全率5)
=1098/5
=219.6[N/mm2]{22.4[kgf/mm2]}
2) ストリッパボルトのように引張の衝撃荷重を受ける場合には疲労強度から選定します。
(同様に1960N {200kgf} の荷重を受け、ストリッパボルトは材質:SCM435、33~38HRC、強度区分10.9とします。)
以下表より、強度区分10.9の許容荷重が1960N{200kgf}以上の時は3116[N]{318[kgf]}のM8となります。従ってM8のねじ部をもつ軸径10mmのMSB10を選定します。なお、せん断荷重を受ける場合にはノックピンを併用してください。
ボルトの疲労強度(ねじの場合: 疲労強度は200万回)
ねじの 呼び |
有効 断面積 As mm2 |
強度区分 | |||
---|---|---|---|---|---|
12.9 | 10.9 | ||||
疲労強度 *1 | 許容荷重 | 疲労強度 *1 | 許容荷重 | ||
N/mm2 {kgf/mm2} |
N{kgf} | N/mm2 {kgf/mm2} |
N{kgf} | ||
M4 | 8.78 | 128{13.1} | 1117{114} | 89{9.1} | 774{79} |
M5 | 14.2 | 111{11.3} | 1568{160} | 76{7.8} | 1088{111} |
M6 | 20.1 | 104{10.6} | 2087{213} | 73{7.4} | 1460{149} |
M8 | 36.6 | 87{8.9} | 3195{326} | 85{8.7} | 3116{318} |
M10 | 58 | 73{7.4} | 4204{429} | 72{7.3} | 4145{423} |
M12 | 84.3 | 66{6.7} | 5337{565} | 64{6.5} | 5370{548} |
M14 | 115 | 60{6.1} | 6880{702} | 59{6} | 6762{690} |
M16 | 157 | 57{5.8} | 8928{911} | 56{5.7} | 8771{895} |
M20 | 245 | 51{5.2} | 12485{1274} | 50{5.1} | 12250{1250} |
M24 | 353 | 46{4.7} | 16258{1659} | 46{4.7} | 16258{1659} |
スクリュープラグの強度
スクリュープラグMSW30が衝撃荷重を受ける場合の許容荷重Pを求めます。
(MSW30の材質:S45C、34~43HRCの引張強さσbは637N/mm2{65kgf/mm2} とします。)
MSWの谷径部分でせん断を受けて破損するとすれば、
- 許容荷重P
- =τt×A
- =38×1074
- =40812[N]{4164[kgf]}
せん断面積A=谷径d1×π×L
(谷径d1≒M-P)
A=(M-P)πL=(30-1.5)π×12
=1074[mm2]
降伏応力≒0.9×引張強さσb=0.9×637=573[N/mm2]
せん断応力≒0.8×降伏応力
=459[N/mm2]
許容せん断応力τt=せん断応力/安全率12
=459/12[N/mm2]=38[N/mm2]{3.9[kgf/mm2]}
タップが柔らかい材質のときはめねじの谷径から許容せん断を求めます。
ノックピンの強度
ノックピン1本に7840N{800kgf}の繰返し(片振り)せん断荷重がかかるときの適正サイズを求めます。(ノックピンの材質はSUJ2 硬さ58HRC~)
SUJ2の降伏応力対応σb=1176[N/mm2]{120[kgf/mm2]}
- 許容せん断強さτ
- =σb×0.8/安全率α
- =1176×0.8/5
- =188[N/mm2]{19.2[kgf/mm2]}
∴MSのノックピンならばD8以上の大きさを選定します。
また、ノックピンのサイズを大きめに統一すれば、工具や在庫等を削減できます。
ねじ部に負荷がかかるような使い方はしないでください。
注釈
- *1
- 疲労強度は「小ねじ類、ボルトおよびナット用メートルねじの疲れ限度の推定値」(山本)から抜粋して修正したものです。