ドライプロセスにおいて、薄膜をつくるための材料を蒸発させる装置を気化源、蒸発源、ソースなどといいますが、次のような方法があります。
(1)抵抗加熱気化源
高融点のタングステンの線状のフィラメントやボート状の電熱ヒーター上に蒸発材料を載せて電流を流し、加熱によって溶融・蒸発させます。加熱ヒーターとしては通常タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブなどの高融点金属が用いられますが、蒸発温度の低い蒸発材料の場合には、もっと低融点の安価な金属が使われます。
(2)高周波誘導加熱気化源
大量にあるいは大面積に薄膜を形成する場合には、抵抗加熱気化源では材料の蒸気が足りません。そこで登場したのが高周波焼入れなどの加熱方法としてお馴染みのこの方法です。アルミナやグラファイトの坩堝を高周波コイルの中に入れて高周波誘導加熱し、坩堝の中の材料を蒸発するものです。主としてアルミニウムの大量蒸発に用いられています。
(3)電子ビーム気化源
上記2つの方法は、高温に加熱すればヒーターや坩堝の材料が蒸発材料へ混入することがあり、半導体素子用などでは大問題であります。このために開発された坩堝を加熱しない方法で、蒸発材料に直接電子ビームを当てる方法です。純度の高い膜が得られます。水冷された坩堝に蒸発材料を入れ、これに強力な電子ビーム(電子の束)を照射して、電子ビームが当ったところだけが蒸発するようになっています。電子ビームを発生するフィラメントは、作業性向上のため坩堝の側面に設置され、磁力によって電子ビームを曲げて蒸発材料に照射しています。
(4)スパッタ法
古くなった蛍光灯の両端が黒くなるのは、蛍光灯のタングステンフィラメントがスパッタされて蛍光面に付着したのが原因です。スパッタ法は、このように低温で熱を使わずにタングステンのような高融点金属を蒸発することができる優れた方法です。
原理は、真空容器内にターゲット(スパッタ)電極(例えばタングステン)と基板を対峙させ、直流高圧電源の−をターゲット電極に、+を基板に接続します。内部を高真空にした後、アルゴンガスを導入しながら、高圧電圧を両極に印加すると放電が始まります。この放電によってアルゴンがイオン化して+イオンとなり、高速でターゲットに衝突します。するとターゲット材料の蒸気ははねとばされて(スパッタされて)基板の表面に薄膜を形成します。
このように薄膜形成材料を蒸発させるには、いろいろな方法が用いられています。