ドライプロセスでは、金属の薄い膜をつくるのに幾つかの方法があります。通常この膜を「薄膜(はくまく)」といっています。はっきりとした定義がある訳ではないのですが、膜の厚さは、大体1μm以下のもので、ナノメータ単位の薄膜の作製も可能であります。
薄膜をつくるには、まず、薄膜となる材料を気化して蒸気にすることが必要であります。これを「気化源(ソース、蒸発源ともいう)」といいますが、気化する方法には、電気による抵抗加熱、電子ビーム、スパッターリングなどがあります。
また、薄膜を形成しようとする素材のことをドライプロセスの世界では、「基板(サブストレートともいう)」といいます。
次に、薄膜をつくる方法について、その概要をお話しましょう。
(1)蒸着法
いろいろの材料を蒸発させて蒸気にする最も簡単な方法は、熱を加えて溶解・蒸発させる方法で、古くから使われてきました。真空容器に、気化源と基板をセットして真空ポンプを運転して排気し、所定の圧力になったら、気化源のスイッチを入れて材料を加熱します。
気化源からは、材料の蒸気が盛んに発生し、四方に飛び散ります。冷たい基板に衝突した蒸気は、直ちに冷却され液体→固体となり、薄膜を形成します。
(2)イオンプレーティング
蒸発した蒸気をイオン化して加速し、より強い膜、新しい機能を持った膜をつくるもので、気化源と基板に高圧電源を印加して、電気めっきと同様な原理で、薄膜と基板の密着性を高めています。
(3)スパッター法
真空容器内の空気を排除した後、アルゴンなどのガスを少し導入して、2極間に高電圧を印加すると放電が始まります。この放電によってアルゴンガスがイオン化し、このイオンが気化源の材料(ターゲット)を叩くことによって、ターゲットの材料が飛び出し(スパッターされ)基板に激突して薄膜になります。
(4)気相成長法
この方法は、前3者とは異なり、電力を使いません。真空容器を排気し、基板を高温に保持します。そこへ金属ハロゲン化合物や金属の有機化合物など、薄膜にしたい材料の気体化合物を導入します。基板表面で熱分解、水素還元、置換反応などの気相化学反応が起こり、窒化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物などの薄膜が形成されます。この膜の密着性は非常に強固です。