円筒絞りで、【図1】に示すように側壁部分に発生するしわがあります。口辺しわはダイR部分のみに現れますが、側壁のしわはダイR部下から側壁にかけて発生します。パンチR部から少し上にかけての発生は少ないです。
このしわの発生原因は、絞りクリアランスが大きいことにあります。普通絞りでは絞り過程での板厚増加を見込んで素材板厚より最大で40%ほどにまで大きくしますが(初絞りのとき)、それ以上にクリアランスを大きくしたときに発生します(【図2】参照)。ブランクと素材板厚の関係に相対板厚と呼ぶものがあります。クリアランスが大きく、相対板厚の値が小さい状態では更に側壁しわは発生しやすくなります。
【図3】はボデーしわを示しています。
ボデーしわは側壁の中間部分にでます。半球絞りやテーパ絞りの加工でよく発生します。絞り加工途中で材料拘束がなくなったときに発生します。そのようすを示したものが【図4】です。絞り過程で、ダイRとパンチR間の材料がフリーになっていることがわかります。この状態のときにしわが発生します。追加条件として、しわ押さえ圧力が弱い、相対板厚が小さいときは、更に顕著にボデーしわは発生します。
このようなことから、断面が円形の絞りでは横から見た形状が、側壁が垂直な円筒絞り、側壁が傾いているテーパ絞り及び半球絞りの順で加工が難しくなります。側壁の拘束状態の違いが要因です。深いテーパー絞りでは、ボデーしわをさけるために円筒絞りでテーパーに近似した階段状に絞り、その状態からテーパーに仕上げる工程を取りますが、このボデーしわを発生させないための対策といえます。